殺りん話を、とりとめもなく・・・ こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。
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犬夜叉完結記念フリー絵をいただきました!
素敵なプロのイラストサイトさま、Psychopompさまのサイトより
下のSSは、こちらのBGMのリピートがおすすめです。
殺生丸さまとりんちゃんの空気感が5割増しになります(笑)
花にねむる
・・・それは、前の十五夜の日に交わされた、大妖と人間のむすめのささやかな約束事。
晴れた弥生の空の下。
草原の風はまだ冷たく、りんは殺生丸の柔らかな白尾にくるまれていた。
小さなりんの口は、小鳥のさえずりのよう。
それでね、それでね、殺生丸さま・・・
一途に向けられる、ひたむきな愛情。
ひたすらに、己を信じる澄んだ瞳。
まるで、本当に鳥の雛のよう。
一月に一度の僅かな逢瀬に、時を惜しむかのように、りんはさえずる。
珊瑚さまの赤ちゃん、双子ちゃんなんだよ
ほんとうに、ほんとうに、かわいいの
二人ともそっくりなんだよ
笑うとね、弥勒さまに似てるの
赤ちゃんって、かわいいんだね
りんもお産のお手伝いしたんだよ
珊瑚さま、苦しそうでね、りん涙がでちゃった
でも、赤ちゃんの泣き声を聞いたらね、
今度は嬉しくて、涙がとまらないの・・・
白尾の中で頬を染めて、りんは瞳の色を深くする。
りんも、いつかお母さんになれるかな・・・
殺生丸は眼差しを緩め、そっとりんの頭に手をおいた。
そのまま、空へ視線をうつす。
西の空が茜色に染まりつつある。
そろそろ頃合いだった。
「・・・りん」
殺生丸の一言に、りんは寂しそうな面を露わにする。
・・・もう帰っちゃうの?
りんの瞳はそう告げている。
それを、口にすることはないけれど。
「・・・またくる」
殺生丸が白尾を解くと、りんの肌に冷たい弥生の風が触れた。
じわりと、りんのまなじりに涙がにじむ。
幼いりんは、寂しさを押さえるすべを知らない。
このままりんに泣かれるのかと焦った邪見は、思わず口を挟んだ。
「り、りん!そうじゃ、お前、欲しいものとか、ないのか?!」
りんは涙をひっこめて、思わず邪見の方をみた。
邪見は人頭杖を振りかざし、大言を豪語する。
「殺生丸様のお力をもって、手に入れられないものなどなーい!!」
主の鼻白んだ目線を受けて邪見はぎこちなく固まり、りんは思わずぷっと笑ってしまう。
りんに欲しいものなんて、ない。
欲しいのは、ただ、いつも、少しでも、一緒にいる時間。
だけど、どうせ一月後にしか会えないのなら・・・
りんは殺生丸を見上げ、ねだるように言った。
「・・りん、殺生丸さまと桜のお花見したいな」
それは、あまりに可愛いわがままで。
殺生丸はりんの願いを受けて、無言で頷く。
りんの顔はぱっと明るくなり、殺生丸へ詰め寄るように聞いた。
「・・・ほんと?本当に?」
殺生丸はりんの頭に優しく手を置いて、その答えとした。
りんは笑顔で、「ありがとう!」というと、嬉しさを隠さず、
殺生丸の足に、ぎゅう、と抱きついた。
それは、大妖と人間のむすめの、ささやかな約束事。
・・・・そして卯月。
りんは、高台にある草原で殺生丸を待っていた。
まーだかな
まーだかな
せっしょうまるさま~
あの頃、よく歌っていた歌をなんとなく歌ってみると、
一緒に旅をしていた頃のような気持ちになって、りんは嬉しくなった。
待つ間の手慰みに、土から顔を出している土筆を摘む。
ここのところ、食卓には毎日蕗の薹や土筆の料理が並ぶ。
りんは苦いなあと思いながらも、頑張って食べる。
春に芽吹く山菜は、苦みを感じるものが多いが、
この苦みが、冬の間に体に溜まった毒素を体外に出すのだと楓から教わった。
殺生丸と旅していた時には花を摘んでいたが、
楓の教えを受けて日々を暮らしていると、
知らず知らずのうちに手に取るものが変わってきていた。
地に足を付けて生きるということはこういう事なのかも知れない。
だけど、りんは花も好きだ。
この季節は、特に好きだった。
・・・だから、今日は少し、わがままを言った。
りんは、春色の空を見上げて、嬉しくて輝くような笑顔になった。
風と共に空に舞うは、桜の花びらと、美しい待ち人の姿。
ふわり、りんのそばへ光を纏う銀色の大妖怪が天降り立つ。
「殺生丸さま!」
りんは殺生丸へ駆け寄り、満面の笑顔で、ぼふっと抱きついた。
背の高さが違いすぎて、いつも抱きつくのは、殺生丸の足なのだが。
りんをあやすように、殺生丸の白尾がりんの体を包み込む。
「・・・息災か」
りんは抱きついたまま、殺生丸を見上げる。
まなじりに涙が浮かぶ。
りんは嬉しくて、涙を浮かべたまま笑う。
「・・・はい」
殺生丸にとっては、この笑顔をみただけで、ほぼ目的は達せられたようなものだ。
・・・だが、今日はりんのささやかなわがままを叶える約束だ。
殺生丸は膝を折り、りんの背に手を回して抱き上げた。
「わぁ、高い!」
りんは殺生丸の目線に改めて驚く。
そして同時に、すぐ側にある殺生丸の金色の瞳に捕らわれる。
それは、吸い込まれそうな美しい瞳。
「殺生丸さま・・・」
「飛ぶぞ」
そう言ったときには、もう、殺生丸は大地からふわりと飛び立っていた。
桜の花びらの舞い散る、春の空をりんを抱いて飛ぶ。
「殺生丸さま、邪見さまと阿吽は?」
殺生丸はちらりとりんに視線を落とし、短く答える。
「使いに出した」
「お使い?そうなんだ、残念・・・」
りんは少し寂しそうな顔をした。
りんにとっては、大切な旅の仲間。
会えないのは、やはり寂しい。
「間に合えば、会える」
前を向いたままの殺生丸からそう聞くと、りんはまたふわりと笑顔になった。
殺生丸はりんを抱いて、険しい山の上へと飛んでいく。
人里は、とうに見えなくなってしまった。
どれだけ楓の村から離れたのか分からない。
だけど、きっととても遠い距離だということは、りんにも分かる。
遠くに、白い雪をかぶったままの連なった山々が見えた。
りんの住む人里からは、いつも見えない山々。
「殺生丸さま、どこに連れて行ってくれるの?」
「・・・桜の花見がしたいのではなかったか?」
殺生丸はこともなげに言う。
「父上の残した、花のためだけに作られた結界がある。そこへゆく」
「結界・・・?」
りんは不安になる。
結界には、りんも入れるのだろうか・・・?
りんの不安を拭うように、殺生丸はりんを抱く腕に、少しだけ力を込める。
「・・・大丈夫だ。私が望めば、入れる」
殺生丸は徐々に高度を落とし、何の変哲もない山へ降り立った。
桜は遠目にぽつぽつとある程度で、花見に適しているとは到底思えない。
「・・・ここ?」
抱いていた腕から大地に降ろされ、心許なげにりんは殺生丸を見上げる。
「ここだ・・・」
殺生丸は森の正面を見据え、りんの手を取り、導くようにして数歩、前へ進んだ。
結界を越える・・・それは、りんにも分かる感覚だった。
薄い薄い、膜のようなものをすり抜けるような。
思わず目を閉じたりんは、再び目を開けて言葉を失った。
そこは、見渡す限り一面が桜の光景だったのである――――。
どこまでも、どこまでも、満開の桜で埋め尽くされた、夢のような景色。
柔らかな風に、はらりはらりと桜の花びらが舞い落ちる。
花々の間から光が漏れ落ちるその大地には、桜色の絨毯が曳かれたよう。
りんはあまりの美しさに、言葉を失い、涙がでそうになる。
手を繋いでいてくれる殺生丸にどうやってこの思いを伝えようか、と見上げると、
りんは更に言葉を失った。
常に鎧を身につけ、戦いのためだけに生きるような殺生丸の姿から、
なんと鎧と二口の刀が消えている。
柔らかな着物と袴だけの殺生丸は、あまりに優美で、神のように美しかった。
よほど、りんが驚いた顔をしていたのだろう。
殺生丸は、りんを見ると表情を和らげ、「どうした」と聞いた。
そんなふたりの上にも、ふわりふわりと、桜の花びらが舞い落ちる。
「殺生丸さま・・・鎧が・・・刀も・・・」
りんの問いに、殺生丸は桜を見上げて教えてくれた。
ここは、現(うつつ)と、現ならざる所との間(あわい)。
大昔、殺生丸ですら知らぬ、妖たちの大きな争いがあった。
それは、数多の神をも巻き込み、地上には恐ろしいほどの災厄をもたらした。
山の神の愛娘であった此花咲夜姫は、桜の神でもあり天つ神の妻でもあり、
そしてその時は、霊峰富士の守り神でもあった。
姫は生まれ育った山の景色が激しい争いに巻き込まれることが耐えられないほど悲しかった。
己が慈しみ育ててきた、桜の御園(みその)が失われると思うと居ても立ってもいられない。
だが、霊峰富士は非常に気性の荒い山で、姫がいなくなると怒り、噴火してしまう。
身動きのとれない姫は、都にいる自分の子孫である現人神を通じ、
西国の妖の総大将に頼み事をすることにした。
どうか、あの美しい故郷の景色を護って欲しい、と。
もはや、現世にとどめずともかまわぬ。
現世とあの世の、あわいになって、時が止まろうともかまわぬ。
ただ、わたくしのためにあの場所を護って欲しいのです。
なぜなら、あの桜の園はもはや私の魂の一部だから、と。
姫の願いは切実だった。
これで、姫が我を失うほど悲しめば、地上の災厄は更に増える。
妖の争いは、さらに酷くなろう。
幸いなことに、妖の総大将には、それは叶えることの可能な願いだった。
多くの妖に「お館さま」と慕われる総大将には、宝仙鬼という友がいた。
作るのに100年はかかるといわれる黒真珠が、すでに出来上がっていると聞いていたからだ。
総大将は、桜の最も美しい時を見計らって、
姫が生まれ育った、そして姫が愛情を注いで育てたこの桜の御園を、黒真珠へ閉じこめた。
そして、この山には二つの空間が同時に存在することとなった。
ここにありながら、実態はあわいへ移った桜の園と、桜の消えた実態の山と。
総大将が黒真珠を持って霊峰富士へやってきたとき、
姫は泣いて喜んだ。
ありがとう、ありがとう、狗の神よ
これでわたくしの大切な場所は護られた
この喜びをどう伝えたら・・・
どれだけ感謝してもたりぬ
そう・・・あの美しい桜を見ましたか
わたくしが護りたいと言った理由がわかりましたか
そうですね、あのような美しい場所は、この秋津島にも二つとありませぬゆえ
・・・そうだ、こうしましょう
あの御園に、そなたと、そなたの血をひくものだけが立ち入ることを許しましょう
あそこには、桜しかありませぬゆえ、桜を愛でるときだけいらっしゃい
これを、この度の御礼としていただけますか・・・?
そなたの血を引く者だけ、
そして、そなたの血をひくものが心底愛おしいと思っているものだけ・・・
だって、桜を愛でるのに、一人では悲しいですもの
ですから、心底愛おしいと思う相手は結界に拒まれませぬ
よい案でしょう?
ああ、それから無粋なものは嫌いですから、
武具などは結界で預かりますわよ
花を愛でるのに、そのようなもの、いらないでしょう・・・?
帰るときにきちんとお返ししますから、ご安心なさい
ああ、それにしても、いつになったらこの争いは終わるのかしら・・・
美しいこの秋津島が可哀想・・・
ねえ、狗の神、そうは思いませんか・・・・?
西国の狗の大将が、妖共の戦いに終止符を打ったのはそれからまもなくのこと。
・・・言葉少ない、銀色の狗の神の息子。
彼が愛しい者に聞かせたのは、その成り立ちの全てではなかったが。
りんは嬉しそうに積もった桜の花びらを手のひらですくい
何度もそれを空に蒔いて、歓声の声を上げていた。
「きれい!!きれいだね、殺生丸さま!!」
殺生丸は、かつての父のように、桜の花びらの上に横になった。
・・・本当に幼い頃、父上にたった一度だけ連れてこられた。
私はりんのように、喜びを全身で表すような子供ではなかったし、
あの頃は、このような場所を欲してもいなかったが・・・。
それでも、父は私に見せたかったのだろう。
・・・きっと、愛されていたのだろう、私は・・・。
父上は今の私のように、無防備な姿でただ寝転がり、目を細めて桜を眺めていた。
殺生丸は、目を閉じる。
すぐに、愛しい匂いが近づいてきた。
「寝ちゃった・・・?」
私はかすかに目を開き、そっとりんの肩を抱き寄せた。
「殺生丸様・・・?」
私は、そのままりんを柔らかく胸に抱き、再び目を閉じる。
はらはらと、桜の花びらが舞い落ちる。
途切れることなく、私の上にも、りんの上にも。
やがて、りんの体から力が抜けて、柔らかな寝息を立て始めた。
・・・たまには、共に眠りにつくのもいいかもしれぬ。
ここには、誰も入ってこれぬ。
武具も解き、刀も預け、私にあるのはお前を抱ける腕だけだ。
よいだろう・・・りん・・・?
桜の花の色に埋め尽くされた神の御園の中で、
妖とちいさな娘の約束は果たされたのだから。
あわいにある桜の下で、
2人は永遠に降り積もる花びらに優しく埋もれていった。
こちらのー枚の絵を、Psychopompさまのサイトで拝見して、
私はもう、涙を抑えることができませんでした。
なにがってもう、私の拙い筆では言い現せませんよ!!
幸せなりんちゃんの表情もそうでしたが、
殺生丸さまの安らかな顔・・・(ノД`)!
こんなに安心して、こんなに安らかな顔した殺生丸さま、見たことあります?!
幸せそうな殺生丸さまを見ると、本当に、本当に、涙がでるんです。
りんちゃんは、たぶん、幸せだと思う。
小さい頃は会えない寂しさとか、
大きくなってからは種族の違いとか、
そういう壁はあるかもしれないけど、多分りんちゃんはえいやっと飛び越えると思うのね。
大丈夫、殺生丸さまがいるから!・・・みたいにね。
それはりんちゃんの強さなんだと思うんだけど。
だけど、本当は、殺生丸さまの方が絶対に辛いんだって。
永遠に近い命の中で、あまりに儚い命のりんちゃんを愛しく思う。
そんなに愛してるのに、大きくなったらりんちゃんに選ばせる、とか言っちゃって。
りんちゃんが選ぶまで、待ってあげてる。
本当は、一瞬でも逃したくないくらい、りんちゃんの命が愛しいのに。
だから、そんな殺生丸さまが、りんちゃんのそばで安らかな顔をして、
安心しきってる姿を見たときに、もう、なんか涙が。。。。。。
おまけに・・・・もしかして寝てる?!(゚ロ゚;)エェッ!?
・・・いいよ、いいよ、たまにはお昼寝しよう・・・。゜゜(´□`。)°゜。
なんせ、泣けるんだってばよ。
そんでもって、その感激をそのまま作者の時子さまにぶつけておりましたら、
だれか絵をネタに文章とか・・・とか仰るじゃーありませんか。
多分、ドン引きされるくらいの勢いでくらいついてしまいました(恥
い・・・いいんですか?!いんですか?
思わず、よだれが・・・!!
と、まあ・・・。
そしたら、ご快諾いただきまして、この度の運びとなったわけです、はい。
人里に預けられて、一年足らずではないかと思われます。
相変わらずの切れのない文章で申し訳ないんですが、
書いている私は、本当に幸せでございました。
時子様、心より感謝もうしあげます。