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あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

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闇をくぐる光



 

月夜に照らされた・・・見渡すかぎりの荒れ地。


つい何日か前までは、小さな村落の慎ましい暮らしが、そこにはあった。

あの邪気の固まりの奈落の体が最後に目指したのは、
異空間へと繋がる骨食いの井戸。

奴はあらん限りの瘴気を撒き散らして、
大地を焦土と成し、骨悔いの井戸へと消えた。

後に残ったのは、見渡す限りの荒れ果てた大地。

「命だけは、助かった」

・・・恐らく、人間どもがそう思えるのも、たったの数日だろう。

大地の枯渇・・・人間どもの営みにこれ以上の絶望はない。


(・・・・・・)


殺生丸は、袴にしがみついて泣きじゃくるりんの体温を感じながら、
周囲に広がる荒れ地を、見渡した。


そして、もうひとつ。
まるで生きているかのように、騒ぎ立てるものがいる。


りんによく似た。

 


・・・まったく・・・

 

すでに、膝のあたりはりんの涙でぐっしょり濡れている。

かすかにため息をついて殺生丸は膝を折り、しゃくりあげるりんの頭を抱き寄せた。

 





 

 

闇をくぐる光

 







 

 

老巫女の申し出を受けて、殺生丸はりんを人里に残すことに決めた。

りんに、人間と共に生きていく、という選択肢を与えるために。
・・・りんが、どちらでも選べるように。


りんを人里に返す、という選択肢は以前からあった。

いつぞや、あのりんを拐かした音獄鬼とかいう妖怪を退治した法師どもが、
りんを無理矢理人里へ戻そうとする前から、何度も。

だが、確証がなかった。
どこぞの人里に残してもりんが無事に生きていける、という確証がない。

今まで妖怪と行動をともにしていたりんの感覚は、
すでに人里で暮らしていた頃とはかけ離れたものとなってしまっている。

人間は竜に乗って空を駆けることはない。
人間とは、地に足を着けて生きていく生き物だ。
一度大地から離れた人間を、再び大地へ縛り付けるのは容易なことではない。

だが、この人里なら、少なくとも共に奈落と戦った者たちがいる。
彼らがりんにとっては数少ない理解者であることは確かだ。


殺生丸が老巫女の申し出を受けたことをりんに伝えると、
幼い娘は当然のことながら、大泣きした。
りんの思いは単純なものだ。

「殺生丸さまと離ればなれになるなんて、絶対にやだーー!!」

りんの抵抗は、思いのほか激しかった。

「りんも一緒に行くーーーっ!!」

殺生丸の意志は、決定と同義語だ。

そう悟った瞬間、りんは涙が溢れだしてどうしようもなくなってしまった。
自分のいったいどこにこんなに涙があったんだろうというくらいに、
次から次から、涙がこぼれた。

殺生丸に命を救われてから、りんの世界は殺生丸を中心に回っている。
りんには、殺生丸のいない世界など考えることすらできない。

あんなに、あんなに、一緒にいたのに、と。

「やだ、殺生丸様!やだよ!!いなくなっちゃやだ・・・!!」

あまりのりんの抵抗ぶりを見かねた邪見が人頭杖を振りかざし、
何かを言おうとした瞬間、従者は主の足につぶされた。

邪見は呻き声と共に「黙っていろ」という主の意志を全身で受け止める。

りんは置いていかれることに怯えるように、殺生丸の袴にしがみついた。

じわじわと殺生丸の膝のあたりにりんの涙が染み込んでゆく。
震えながらしゃくりあげる、ちいさなりんの姿。

殺生丸は、りんの暖かさを感じると共に、もう一つの波動を感じ取る。


・・・それは、りんによく似た。

 

「・・・会いに来る」


膝を折り、しゃくりあげるりんの頭を抱き寄せた。
りんの耳のすぐそばで、殺生丸は言った。

「・・・りん」

びくり、とりんは体を震わせて、泣きはらした真っ赤な目で殺生丸の顔をおずおずと見る。

「りん、お前のことは必ず私が守る。
 ・・・満月の日に会いに来よう。
 お前はまだ幼い。
 人としての己を学ばねばならぬ。
 人としての知恵をつけよ。
 そして、その先で選ぶがよい。
 私と共にくるか、人の世で生きるかを。
 ・・・分かるな?」

殺生丸の言葉を聞きながらも、りんの大きな目からぽろぽろと涙がこぼれる。
殺生丸の言っていることは、正しいことだった。
本当は、りんだってずっと前から気が付いている。

・・・人間と、妖怪は生きる世界が違う。
・・・でも、そんなことはもう、ずっと前から知っている。

「本当に・・?
 必ず、会いに来てくれる・・・?
 約束、してくれる・・・?」

りんは泣き声で、必死に聞く。

「いつか、殺生丸さまと一緒に、行けるの・・・?」

殺生丸は、そっとりんの頬に触れる。
ちいさな、涙に濡れた頬に。

「・・・私が嘘を言ったことがあるか?」

「殺生丸さま・・・」

りんは、殺生丸の胸に顔を埋めて泣いた。

・・・それは幼い娘なりの、覚悟。


この人里に残したからといって、
りんを老巫女や退治屋どもに完全に任せるつもりなど、毛頭ない。

この殺生丸が生まれて初めて、もう二度と失いたくないと思う愛しい命。

そもそも、この人里に残すのも私のためなどではない。
・・・すべてりんのためだ。

わたしは、おまえの匂いの途切れるところには行かぬ。

・・・おまえの匂いの途切れるところには、行けぬ。

 

 

・・・必ず守る。

 

 

殺生丸が、目を閉じてそう強く思った瞬間。

・・・騒ぎ続けていた天生牙が、ひときわ強く波動を発した。

 


ビィィーーーーーーン・・・・

 

 


りんの見開かれた瞳にうつるは、天生牙から溢れ出す浄化の光。


「殺生丸さま・・・天生牙が・・・」

 

 

 


・・・救え、というのか。


・・・りんだけでは、足らぬ、か。

 


迷い無く、殺生丸はりんをその腕に抱き立ち上がる。

 

・・・確かに、この地でりんが飢えるようでは元も子もない。

 

愛しい、ただ一つの命。

おまえが、この大地で健やかに生きるよう。

 


・・・私は、ただ、それだけを。

 

 

左手でりんを抱き、右手で騒ぎ立てる天生牙を手に取った。

正面で構え、その波動に自らの想いをのせる。

 

・・・命に従え、天生牙よ。

 


浄化の光は瞬く間に溢れだし、周囲を覆う。


闇をくぐる光は大地を覆い、枯れ果てた命を蘇らせていった・・・・・。

 

 

 


・・・翌朝

 

 

疲れきった、泥のような眠りから醒めた村人たちは我が目を疑った。


「・・・!?」

「こ、これは・・・・!!」

「一体、何がおきたんじゃ・・・?」

 

村人の前に広がるは、命溢れる緑の大地。
以前と同じ、清らかな川の流れに豊かな森。
それは、殺生丸によって放たれた浄化の光によって、一斉に芽吹いた緑。
昨日まで枯れ果てて見る影もなかった畑に、柔らかい春の草々が朝日を浴びている。

それは、にわかには信じられない光景だった。

奈落とかいう妖怪がもたらした災厄・・・それは、鍬すら跳ね返すような枯れた大地。
育っていた作物は、すべて枯れ果て、備蓄していた食物も
奈落の瘴気の固まりによって一瞬にして消え去ってしまったのだ。
住む家すら失ったものも大勢いる。

招かざる災厄に、さすがに村人は飢饉を覚悟せざるを得なかった。
この土地を捨てて生きて行くにも、
一から開墾して作物を得るまでには、ゆうに一年はかかる。
それまで、一体どうやって食いつなげというのか。

命ばかりは助かったといえども、村人たちの心は重く塞がっていた。


ところが、見渡す限りの焦土が一夜にして再び緑の豊穣の大地へと変貌をとげたのだ。


素朴で力強い村人たちは歓喜の声をあげて、再び大地へと踏み出した。

春先の今ならば、今からでも十分に秋の収穫には間に合うだろう。


「奇跡じゃ~~」

泣いている老人、嬉しそうに駆け回る子供。
抱き合って奇跡を喜ぶ女たち。

このような奇跡は、人間の理解出来る範疇を超えている。
年配者は皆、これは神の加護だと若い者に諭し、
やがて村人は皆、彼らの精神的な支柱である楓のもとへと集まってきた。


「皆、また一から頑張ろうな。この村を、良き村にしよう」


穏やかに微笑む老巫女の楓のそばには、小さなりんの姿があった。

 

・・・村人は、誰も知らない。


・・・このちいさな娘を慈しむ心が、大地を癒したことを。

・・・浄化の光をあまねく照らしたのは、殺生丸という妖怪であることを。

 

・・・そしてそれが、一人のちいさな人間のむすめの為であることも。

 


老巫女は、ひとりの幼子にかかる愛情を思った。
彼女はただ、りんの未来を思い、引き取ることを申し出ただけだ。

・・・それが、結果として村を救った。


(・・・まるで、護り神じゃ)

 

「・・・楓さま?」

りんが見上げると、柔らかな春の光のなかで、空へ手を合わせる楓がいた。

楓にならい、村人達が皆、空へ向けて次々と手を合わせた。

 

・・・皆のその姿は、後々まで、りんの忘れられない光景となった。

 

りんがこの人里での、はじめての日のことだった。




 









犬夜叉の最終回を見て、ひょえぇぇぇ!!と思ったことが一つありまして。
それはね。

・・・こんなボロボロに荒れ果てた土地で、みんなどうやって暮らしてくの?!

ということでした。
奈落が井戸に消えて、犬夜叉がかごめを追って冥道に消えて。
アタシは殺生丸さまご一行を瞬きもせず見つめてましたよ!
最後のショットだったからね!!!
・・・けど。
・・・草一本残ってなかったよね?!
うーーーーん・・・
そんなとこに、りんちゃんを置いていくかなー・・・と、ね(*´・ω・`)ノ

解決方法は・・・一つしかないよ。うん。





 

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