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あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

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禁断の果実

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リンクさせていただいているモジャさまのサイト、
『彼空百景』さまにて超!かわいいイラストを拝見してしまい、
萌えに萌えて妄想してしまいました。
幸せな時間でした・・・///
モジャさまのご好意でイラスト付のお話をUPできました。
私は幸せもんです(´艸`o)゚.+:
感謝しております☆





禁断の果実

拍手[60回]



「ずいぶん強くなったな、殺生丸。このあたりでまともに相手になる妖は、もうおらぬか」


夏の夜の草原。
満月に照らされた薄明るい闇に妖が二つ。


「・・・父上がおられる」


立ちのぼる、殺気。

なびく銀色の髪と金色の眼。
西国の妖なら知らぬものはいない、狗の親子。

息子は息があがりかすかに肩を上下させていた。

「少し休もう」

大妖はそう言うと、目を細めて満月を眺めた。

先ほどまでの殺気は一瞬で消え去り、見事なまでに微塵もない。
それは並はずれた強さを持つものだけが可能なもの。

どこからか風に乗ってふわりと爽やかで甘い香りが漂う。

「ああ・・・林檎(りんきん)だな。良い香りだ。そうだ、知っておるか?殺生丸」

「何をです」

「外國(とつくに)に伝わるこの果実の伝説だ」

「興味がありませぬ」

にべもない。
大妖は苦笑して我が子を見る。

「父上は外國へ行かれたことがあるのですか」

まったく、息子の興味は己にしか向かぬらしい。

「ああ、ふらりと旅にでてみたことはあるぞ」

「・・・」

真面目な顔をしておる。
息子に気づかれないように背を向けて大妖はくすりと笑った。
恐らく、父親が行ったのなら己も行くべきだなどと大真面目に思っているのだろう。
まったく。

「・・・その昔、人は知恵を持たず、神の楽園で守られて暮らしていた。
 だが、蛇にそそのかされて人間は楽園に実っていた知恵の実を口にしてしまうのだ。
 掟を破り知恵をつけてしまった人は、怒った神から楽園を追い出されてしまい
 厳しい大地で生きていくしかなくなった・・・」

息子は怪訝な顔をした。

「人が初めて犯した罪の果実、知恵の実といわれるのがあの林檎の実だ。」

「・・・莫迦莫迦しい」

「そうか?なかなか面白いではないか」

「・・・そのようなことより」

息子は息をのみ、爪を構えた。
妖気が立ち上がり足下の草原がなびいた。

大妖は振り返ってちらりと息子を見る。

・・・強くなることしか考えられぬ、か・・・。

大妖は、全身から力を抜いて伸びをした。
背後から突き刺さるような殺気をするりとかわすと、草原にごろりと横になった。

「今宵の稽古はもう終わりだ」

「父上!」

振り上げた爪の遣りどころがなく、殺生丸はたちまち不満をその美しいかんばせに乗せる。

「たまにはこの林檎の香に酔うのもよかろうよ。しかも今宵は望月だ。つき合え、殺生丸」

大妖はそばに控えていた阿吽の首にぶら下げている瓶子を指さす。

「・・・結構です」

空間が歪むのではないかと思うような妖気をぞわり、と発すると、
息子は本来の姿へ戻り、空を駆けていってしまった。

大妖はため息を付いて首の後ろをさする。
口元に笑みをたたえて。

「なかなか、息子と酒を飲む夢が叶わぬなあ・・・」

阿吽が近づいてきて、そこから蚤じじいの冥加が飛び降りてきた。

「お館様、わしは死ぬかと思いましたぞ!!」

「おお、冥加、もう安全だぞ」

「全く、何をノンキなことを~!お館様と殺生丸さまが稽古を始めた途端、
 このあたりの妖怪はほとんど逃げ出してしまいましたぞ。
 もっと場所を選んでくだされ!」

大妖は人懐っこい笑顔を浮かべ、嬉しそうに言う。

「さすが、私とあの妻の子だなあ。あれは見る間に私より強くなるぞ」

「いやはや、性格はお館様にも奥方様にもあまり似ておられぬようですが・・・。
 奥方様はあれでも冗談のお好きな方ですしのう」

大妖は冥加を肩に乗せ立ち上がり、阿吽の首から瓶子をとると、
胸元から杯を出してとくとくと酒をついだ。

「我々の子だからこそ、まずは強さを求めるのも仕方のないことかもしれぬなあ・・・。
 だが、強さを手に入れても、守るべきもののない強さは虚しいだけだ。
 それが殺生丸にわかるのは、いつだろうなあ」

風に乗って届く林檎の香りが心地よい。
瑞々しく、爽やかで、甘い香り。

大妖は、杯に満月を映した。
杯をくゆらせながら揺れる満月を見て、困ったように笑った。

月の名の人間の姫を想う。

「十六夜のことを知ったら、あれは随分と怒りそうだなあ・・・」

「はあ・・・」

冥加も腕を組んで、どうしたものかとため息をついた。
もう何度となく繰り返された、大妖怪と極小妖怪の会話。
常に行き着くのは、大妖の楽観的な結論なのだが。

「まあ大丈夫だ、冥加。何しろ天生牙があれを選んだのだぞ?
 慈しむ心の素質がなければあり得ぬことよ。
 それに殺生丸も私の子。いつか必ず、守りたいと思える姫ができよう。
 できるなら殺生丸の選んだ可愛い姫をこの目で見てみたいものだがなあ・・・」

大妖はあっけらかんと笑い、杯を重ねる。

冥加は想像ができぬ、と思う。
想像するだけでも殺されそうだ。


・・・そしてまもなく。


大妖・・・闘牙王は愛する姫と赤子を守るために命を落とし・・・

心を凍らせたままの息子はその形見を探す旅に出た。














「はぁ・・・」



こっそりと、何度目かのため息をついた。

きゅるるるる~



りんのおなかが鳴る。




殺生丸と共に旅に出て、まだ数日。
今晩は、食べるものを見つけられないまま夜を迎えてしまった。

今朝がた朝靄の漂う森の中で、邪見様より更に小さな妖怪から
「ならく」という名前の妖怪がいたという話を聞いて、
殺生丸さまはいつになく飛ぶ速度を上げた。

りんも邪見さまも、阿吽に乗って空を駆けた。
(おなかすいたなぁ・・・)
そう思いながらも、急いでいる殺生丸さまに迷惑は掛けたくない。
そうじゃなくても、村では厄介者だと思われながら生きてきたのだ。
嫌われるのは怖いし、置いて行かれるのはもっと怖い。

殺生丸さまが頑張ってるんだもの、りんも頑張らなきゃ!

そう思い、阿吽の手綱を必死で握りしめて殺生丸の後ろ姿を追った。

・・・が、意外にも一番最初に音を上げたのはりんではなく、阿吽だった。
殺生丸の空を駆ける早さに付いていけなくなったのである。

空には夕焼けが広がっている。
すぐにあたりは闇に覆われる。

徐々に阿吽と距離が開くのを感じ取り、殺生丸は邪見に 下の森に居ろ、と言うと、
更に速度を上げて空を駆けていってしまった。

邪見もりんも阿吽も、くたくたである。
阿吽はもとより、阿吽の上で揺られながら一日をすごしたりんと邪見も足下がおぼつかず、
やっとの思いで焚き火を焚くとすぐに眠りこんでしまった。



きゅるるるるる~・・・



りんが目を覚ましたのは真夜中である。

(う・・・おなかすいた・・・)

気がつかない振りをしてもう一度眠ろうとしたが、
その途端、ぐう~~~と大きな音が鳴って、ばっちり目が覚めてしまった。

季節は夏だ。

夜でも寒くはないが、夜の森はさすがに怖い。
焚き火のそばから離れるのは危険だと思った。

邪見を起こさないようにそっと小さくなった焚き火に木の枝を足す。
夜は、火が獣から己の身を守るのだと、旅のはじめに邪見から教えてもらった。
りんも狼の怖さは身にしみている。


きゅるるるる~~~・・・・



「はぁ・・・」


(おなかすいたなぁ・・・・)


地面にぺたんとすわって、ちろちろ燃える火を見るともなしに見た。
なんだか、おなかがすくと元気がでない。

殺生丸と過ごす旅は、毎日が新たな発見だ。

「自分の食べ物は自分で探せ」

そう言われてから、りんは邪見の手を借りつつ食べるものを見繕ってきた。
昨日は蜂の巣を見つけた。
邪見さまが人頭杖で蜂を追い払ってくれて、
落とした巣から生まれて初めて蜂蜜を食べた。
手足をばたばたさせて、ぴょんぴょん飛びまわって、
それでも伝えられないくらい、甘くて美味しかった。
あんまり美味しくて、殺生丸さまと邪見さまに交互に抱きついた。
邪見さまは目を白黒させて「変な奴!」って言ってたけど、
だって本当に美味しかったもん、とりんは思う。

(殺生丸さま、まだ戻ってこないのかな・・・)

せめて、殺生丸がそばにいてくれたら心がほこほこになって
空腹も平気になるんじゃないかな、と思う。

・・・寂しいなぁ・・・

空腹も手伝って、急に心細くなった。
涙が出そうになる。
膝をかかえて、目をつぶって、ぎゅうっと小さくなる。


そのときふわりと背後から甘い香りがした。
爽やかで甘酸っぱい、果物の香り。

はっと振り返ると、そこにはふわりと空から降り立った殺生丸がいた。
月明かりを背にして、まるで光をまとっているように見えた。
右手にはなにか木の枝を持っている。


「殺生丸さま・・・」


りんは潤んだ瞳を上げた。
殺生丸が戻ってきてくれたことが嬉しいのに、いつものように駆け寄る元気がなかった。

ぺたりと座り込んだままのりんをみると、殺生丸は無言で近づき、
赤い実がたわわに実った木の枝を差し出した。

くらくらするほど、甘酸っぱい香りがりんを包む。

どうしていいか分からず、ただただ自分を見つめ返すりんに、
殺生丸は枝から一つ果物をちぎると、りんへ差しだした。

「殺生丸様・・・?」

「・・・いらぬのか」

「これは・・・?」

「・・・林檎(りんきん)だ」

「りんきん・・・?」

りんは、両手を林檎へむかってのばした。
・・・まるで、餌を待つ雛鳥のように。
・・・疑うことなど、知らぬように。

ringo6.GIF


















「これ、いいにおい」



無垢な人間の娘。

かぐわしい香気を放つ果物。



・・・ふと、殺生丸は思い出す。


遙か昔の、父上との戯れのような会話。








「ああ・・・良い香りだ、林檎(りんきん)だな。知っているか?殺生丸」

「何をです」

「外國(とつくに)に伝わるこの果実の伝説だ」

「興味がありませぬ」








あの時、父上は何と仰ったのだったか・・・・?





「りん」


「はい・・・?」


林檎を持ち、己を無垢な瞳でひたむきに見つめる人間の娘。

それは・・・その実は。


「禁断の実かもしれぬ」

「きんだん・・・?」

「それでも構わぬなら、食うが良い」

りんは不思議そうに、林檎の実を眺めた。

「殺生丸様は・・・」

言葉を紡ぐむすめの唇は林檎の色。

「食べても大丈夫って思う?」

疑うことを知らぬ無垢な瞳が琥珀色の瞳と絡み合う。



・・・知恵の実、か。



・・・くだらんな。




「食え」


そういうと、りんは満面の笑顔で「ありがとう!」といい、林檎を食べた。
一口林檎をかじるたびに、あたりに林檎の甘い香気が広がる。

あらかた一つを食べ終えようかというとき、ふと見ると、
りんの目尻に涙がうかんでいるのに気が付いた。
殺生丸は人差し指を折り曲げて、その先でりんの涙を拭う。


・・・泣くほど、腹がすいていたのか。


口には出さなかったが、まるでその声が聞こえているかのように、
りんはふるふると首を振った。

林檎の果汁でべたべたになっている手で、殺生丸の人差し指をきゅっと握る。

「戻ってきてくれて、嬉しかったの」
「あ、林檎も本当に、本当に、嬉しかった。おなかがすいてたから」
「でもね、殺生丸さまが戻ってきてくれて、嬉しかったの」

りんはみるみるうちに涙を盛り上がらせ、ぽろぽろとこぼした。

「殺生丸さま・・・」

ひっく、ひっく、とりんは泣きながら、ときどきカクンッと眠っている。

殺生丸はため息をついて手を開いた。
りんの指がほどける。

自由になった手で、りんから林檎の芯を取り上げ、焚き火に放る。

「あ・・・」

「まだある。明日、食え」

「はい・・・」

りんの目は、もう開かない。
ぽふ、と己に倒れ込むようにして眠り込んだりんを、殺生丸はそっと横にすると立ち上がった。

切り落としてきた林檎の枝を、りんの側に置いた。
甘酸っぱい香気が立ち上る。

戻る途中で見かけたから、枝ごと手折ってきた。
たわわに実った一枝があればしばらく飢えることもなかろう、と。

殺生丸は小さく丸くなって眠る人間の娘をしばらく見つめた。



己から受け取った禁断の果実を食べた人間の娘は、
どのような罪を背負うのか。



・・・もう、人里には戻れぬかもしれぬ


ふと、そう思った。


・・・与えるべきでは、なかったのかもしれぬ。
だが、選べる筈がなかったのだ。


この娘は己の腕の中で生き返ったのだから。



林檎の香りのする人差し指を舐めると、りんの涙の味がした。






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※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





言い訳なあとがき



モジャさまのリンゴのイラストがあまりに可愛らしくて、
思わず一気に書き上げました。
萌えってすごい☆
素敵なイラストを拝受してしまいました!!
ありがとうございます、モジャさま~~(´艸`o)゚.+:
感謝・感謝です☆

えーっと。
・・・おなかすいて、誰とも連絡とれなくて、寂しくて、
そう言うときに大好きな人が手土産持って来てくれたら・・・?
私だったら、泣いちゃう。泣いちゃうよ。
りんちゃんは小っちゃいから、なおのことだと思うのです。
そして、小っちゃい子って、寝る前は更に情緒不安定・・・よね?
少なくともウチの甥っ子はそう。
たまにはぐずっても・・・いいよね(笑

戦国時代のリンゴってどんなのなんだろうと思って、
林檎について調べてみました。
今我々が食しているリンゴは西洋リンゴで、
明治時代に日本に入ってきた品種なんですって。

日本には、平安時代に中国から林檎(りんきん)が渡ってきて、
現在までごく僅かですが、「和りんご」として残っているらしいです。
ちなみに、実の大きさは4~5㎝。
お盆の頃にたわわに実るんだそうです。
りんちゃんが食べたのは、たぶんこっちだなあ、と。うん。

公の記録では、奈良の春日大社に高倉天皇が奉納したものがあるとか。
実はこの春日さんの林檎の木、何度も見たことあるんです。
「なんでリンゴ・・・?」と思ってましたが、これとはね(*゚∀゚)=3
実物を見ても何とも思っちゃいませんでしたが、
殺生丸様とりんに関わるとなると、完全に別格扱い。
出会ってたことに感動。(バカですね・・・)

モジャ様、最高の萌えをありがとうございました!


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