殺りん話を、とりとめもなく・・・ こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。
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殺生丸さまが付いてくるりんちゃんを受け入れて、
りんちゃんが市松模様の着物を手に入れて。
声の出なかったりんちゃんが、初めてしゃべった言葉は何だろう。
原作では完全に触れず、描かれず。
想像、膨らんできますよね・・・。
成長したりんちゃんが、いつか、
その時の話をぽつぽつと話したらこんな感じかな・・・と。
りんちゃん目線です。
はじまりの森<1>
誰かに優しく触れられたのは、久しぶりだった。
最後に人に触れられた記憶は、殴られた手のひらだったから。
背中に、支える腕を感じたの。
力強くて、揺るぎない腕だった。
目の前には吸い込まれるような金色の目と銀色の髪。
村の奥の森にいた、傷ついた綺麗なひと。
・・・りんの傷を心配してくれた、優しいひと。
この人が助けてくれたんだ・・・
そう思った。
支えてくれていた腕から立ち上がったとき、
この人に付いて行っても大丈夫かなぁとか、
迷惑なんじゃないかなぁとか、
そんなことは何にも考えなかったの。
去っていくあの人を見て、
りんは付いていくことしか、考えなかったの。
狼から噛み付かれたときの言葉にできない痛さと、
殺されるって思ったときの恐ろしさは、すぐに思い出した。
何匹かの狼がりんの体にのしかかってきた時、
どくどくと流れ出ていく血を感じて、
りんはあんまりに痛くて、苦しくて、怖くて、
ふぅって何にも分からなくなったことも。
あの人の腕の中で目を開けたとき、
夢から覚めたみたいにどこも痛くなくて、
村の人に折檻されたケガも綺麗に治っていて、
だから、この人が不思議な力を使って治してくれたんだって思ったの。
あの人を探していたという緑色の小さな妖怪さんが、
あの人のことを「せっしょうまるさま」って呼んでた。
りんはこの人にぴったりなキレイな名前だと思ったよ。
・・・りんも、声に出して呼んでみたいなって思った。
喋ろうとすると、いつも喉に大きな石が詰まったみたいになるんだけど。
・・・でも、どうしても振り返って欲しかったの。
もう一度、あの人の顔を見たい。
金色の、あのキレイな目を見たいの。
呼んだら、振り返ってくれるかな。
「・・・せ・・・せっしょう、まる、さま・・・」
・・・りん、本当にびっくりした。
だって、家族が夜盗に襲われてから何年も、
一度も声がでなかったのに。
思わず口に手をあてて立ち止まっていたら、
殺生丸様は振り返ってりんを見てくれていた。
きれいな、金色の目で。
だから、一番言いたかったことを言ったの。
どうしても、言いたかったこと。
助けてくれてありがとう、せっしょうまるさま
あたしの名前は、りんっていうの
喋れることが嬉しくて、りんはニコニコしてた。
殺生丸さまはしばらくりんを見てこう言ったの。
「・・・邪見」
「ははっ何でございましょう、殺生丸様」
「血の臭いが鼻につく」
「・・・・はい?」
「新しい着物を用意しろ」
「・・・は?・・・えぇっ!?ま、まさか、この人間の着物でございますか?!」
「ほかに誰がいる」
小さな妖怪さんは口をぱくぱくさせて、
持っていた杖を、からーんって落としちゃった。
「・・・邪見」
「・・・は、あ、いや、あの・・・」
「じゃけん?じゃけんさまっていうの?」
「え?・・・ああ、そうじゃが・・・」
「りんはね、りんっていうの!よろしくね、じゃけんさま!」
りんが言うと、邪見様はがっくりと肩を落としちゃった。
どうしてだったんだろう。
「・・・行け」
「は・・・はい・・・。あ、阿吽をお借りします・・・」
邪見様があうんに乗って飛んでいくと、
殺生丸様はそばにあった岩に腰を下ろしたの。
「せっしょうまるさま、怪我はもういいの?」
りんが聞くと、殺生丸様はこちらをちらりと見て言った。
「・・・人間と一緒にするな」
人間じゃ、ない。
それなら、殺生丸様はだれなの・・・?
りんは、不思議に思ってたことを聞いてみた。
「・・・せっしょうまるさまは、神様?」
「・・・神ではない」
「じゃあ・・・妖怪?」
「そうだ」
「そうなんだぁ・・・」
殺生丸さまは目を閉じた。
不思議と怖いとは思わなかった。
そよそよと暖かくて気持ちのいい風がふいて、
殺生丸様の銀色の髪の毛がさらさらと風になびいた。
きらきら光る銀色の髪の毛が綺麗で、りんは見とれちゃったよ。
「妖怪さんって、初めて会ったけど・・・」
りんは殺生丸様のそばにぺたんと座って、
殺生丸様をながめてた。
「せっしょうまるさまは、きれいだねぇ・・・」
どれだけ見ても、見飽きなかった。
森から差し込む柔らかい木漏れ日が、
殺生丸様の髪の毛や白い毛や着物を照らしてた。
りんが今まで見た一番綺麗な人は、
村の娘さんがお嫁にいくときの花嫁姿だったけど、
それよりもずっとずっと、綺麗だった。
りんが何回も「綺麗だね」って言っても、
殺生丸様はどうでもよさそうな顔をしてた。
男の人だから、綺麗って言われてもあんまり嬉しくないのかな。
りんは綺麗だなんて言われたことないけど・・・
言われたら、きっと嬉しいとおもうなぁ。
そう思ったとき。
殺生丸様は目を開いてりんの方を見て、
かすかに目を細めて、聞いたの。
「・・・怪我の具合はどうだ」
りんは、涙が出そうになった。
狼に襲われる前も聞いてくれた。
りんのことを、心配してくれる人がいる。
こんな、優しい言葉をかけてもらったのは、本当に久しぶりで。
「・・・ありがとう、せっしょうまるさま。もうどこも痛くないよ」
「・・・ならばよい」
嬉しいと、涙がでそうになるんだね。
はじめて知ったよ。
「ありがとう、せっしょうまるさま・・・。せっしょうまるさまは、本当に優しいね」
りんは、涙を拭って、えへへって笑った。
殺生丸様はほとんど喋らなかったけど、
りんは自分のことを色々お話ししたよ。
夜盗に襲われて一人になったこと。
お情けで、村で養われていたこと。
・・・ずっと、声が出なかったこと。
「せっしょうまるさまは、旅をしているの?」
「・・・刀を求めている」
「そうなんだ・・・刀かあ・・・せっしょうまるさま、強いんだねぇ」
「りんも・・・」
・・・どきどきしながら、聞いた。
「りんも、一緒に行ってもいい・・・?」
強い風が、ざぁって吹いた。
木の葉が舞って、殺生丸様の髪の毛がさらさらと空に舞った。
「・・・・」
殺生丸様は、すこし黙って、こう言ったの。
「・・・好きにしろ」
「・・・いいの?」
「・・・好きにしろと言っている」
「・・・ありがとう、せっしょうまるさま!」
りん、すごく、すごく嬉しかった。
殺生丸様と一緒にいけるんだ。
旅って、はじめて。
そのとき、空から声が聞こえてきた。
「せっしょうまるさま~~」
「あ、じゃけんさまだ~~!!」
空から、双頭竜が降りてくる。
邪見様は、きれいな市松模様の着物を持っていた。
りんにはよく分からなかったんだけど、
殺生丸様の傷は完全に治ってなかったんだと思う。
岩に座ったまま動くつもりのなさそうな殺生丸さまを見て、
邪見さまはあれこれ言いながら温泉を湧かし、
りんをきれいにして新しい着物を着せてくれた。
りんは、嬉しくてずっと喋ってたら、
最後には「うるさーーい!!」って、邪見様に怒られちゃった。
殺生丸様の鎧は完全に治るまでにそれから丸一日かかって、
その後あたしたちは旅に出た。
あの森は、殺生丸様と邪見様とりんと阿吽の、
はじまりの森なの。
・・・思い出の、森なんだよ。
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