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あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

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その一言が、私の救いでした


注) 新婚さん。甘め注意。





・・・本当に、あの一言が、ずっとりんの救いだったの。












その一言が、私の救いでした

拍手[248回]


 

 

 


―――――あたしは、平気。 だから、放っておいて。


―――いいの。 大丈夫なの。

―――ちゃんと、見つけてくれるから、大丈夫なの。


―――――嫌!! 人里なんかに、戻りたくない!!・・・離して!


―――――――殺生丸さま! 殺生丸さま・・・!!!

 

 

 



 

「・・・・りん」


その声に、りんは、うっすらと目を開ける。
目尻から、ほろほろと涙がこぼれた。

「・・・・殺生丸さま・・・」


肌を通して伝わる暖かさに、ここは大好きな人の胸の中だと分かる。
眠る必要は無いのに、このひとは、いつもりんの眠りに寄り添ってくれる。
優しい、優しい、りんの大好きな殺生丸さま。

寝屋を覆う薄布を通して届く月の光で、ぼんやりと輝く銀の髪。
金色の目をかすかに細めて、低い声が言う。

「・・・・うなされていた」

「はい・・・」

りんは、その胸の中に顔を埋める。
その暖かさにほっとして、すぐに涙はとまった。
暖かな幸せに、りんの口元がほころぶ。

「・・・ふふふ、懐かしい夢を見ちゃった・・・」

「・・・」

殺生丸の指が、優しくりんの髪を梳く。
地肌に触れる指の心地よさに、りんはうっとりとしてしまう。
怖かった夢が、嘘のよう。

「・・・ねえ、殺生丸さま」

「・・・なんだ」

「りんが小さな頃、音獄鬼っていう妖怪に拐かされたときのこと・・・覚えてる?」

「・・・ああ」

「あの時、殺生丸さまが助けに来てくれて、りんに「好きにしろ」って言ったの。
 ・・・殺生丸さま、覚えてる?」

「・・・・」


殺生丸は胸の中に顔を埋めたままのりんを見る。
髪を梳いていた指が、りんの顎をとらえ、上を向かせた。

桜色の唇に、柔らかな口づけが落ちる。
ついばむような口づけは、やがて深くなり、何度と無く繰り返される。

いつの間にか、りんは両手首を捕まれて、組み敷かれていた。
たくさん、たくさん、口づけが落とされて、りんは幸せで泣きそうになる。
まぶたに、頬に、耳たぶに、おでこに。
首筋を唇が這うと、りんは堪えきれずに、か細い甘い声をあげた。

「・・・・っ」

甘い刺激に、これから起きることを予感して、全身が粟だってしまう。
殺生丸は、そんなりんの耳の側で囁く。

「・・・もう「好きにしろ」とは言わぬ」

「・・・せ、しょうまる、さま・・・・」

「お前は、私のものだ。 ・・・好きになど、させぬ」

そう言うと、柔らかな唇が鎖骨の上を強く吸った。
甘い痛みが、りんを縛る。

「・・・・あ・・・だめ・・・」

跡が残っちゃう、という言葉は、すぐに口づけで封じられてしまった。
深い口づけを交わしながら、りんの夜着の帯が、殺生丸の長い指にするりと解かれる。
絹の夜着は柔らかく滑らかで、帯がなくなると、あっというまにはだけてしまいそうになる。


・・・・ほろり、とりんの瞳から涙が滑り落ちた。

 

(・・・・・甘露の匂い)

 

ふわりと漂った涙の匂いで、りんが泣いていることに気が付いた殺生丸は、帯を手にしたまま、
怪訝な表情をして、りんの両頬を、その手のひらで包み込んだ。

「・・・・どうした」

「・・・・・・嬉し、かったの」

「・・・・」

「りん、あのとき殺生丸さまに、「好きにしろ」って言われて、すごく嬉しかったの・・・。
 殺生丸さまと、ずっと一緒にいていいんだって思って、嬉しかったの・・・」

ほろほろと、りんの瞳から、涙がこぼれた。

その涙を、殺生丸の唇が吸う。

「・・・ふふふ」

りんは、たくさんの口づけを受けて、泣きながら笑っている。

「人里に残っても、あの言葉を思い出すと・・・大丈夫だって思えたの。
 だって、殺生丸さまは、嘘はつかないもの・・・・。
 りんが一緒に行きたいって言ったら、連れていってくれるって、信じてた・・・」

「・・・・私は、もう好きにはさせぬ、と言っている」

金色の目に間近で見つめられて、りんは、ふふふ、と笑った。
金色の目も、微かに笑いを含んでいるように見える。

「・・・覚悟するんだな」

「・・・・・はい」


妖が夜着を脱ぐ仕草で、薄い寝屋の帳が、ふわりと揺れた。

・・・美しい虫の音の響く秋夜の庭に、細い、甘い声が混じった。

 

 

 


 

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