殺りん話を、とりとめもなく・・・ こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。
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注) 新婚さん。甘め注意。
・・・本当に、あの一言が、ずっとりんの救いだったの。
その一言が、私の救いでした
―――――あたしは、平気。 だから、放っておいて。
―――いいの。 大丈夫なの。
―――ちゃんと、見つけてくれるから、大丈夫なの。
―――――嫌!! 人里なんかに、戻りたくない!!・・・離して!
―――――――殺生丸さま! 殺生丸さま・・・!!!
「・・・・りん」
その声に、りんは、うっすらと目を開ける。
目尻から、ほろほろと涙がこぼれた。
「・・・・殺生丸さま・・・」
肌を通して伝わる暖かさに、ここは大好きな人の胸の中だと分かる。
眠る必要は無いのに、このひとは、いつもりんの眠りに寄り添ってくれる。
優しい、優しい、りんの大好きな殺生丸さま。
寝屋を覆う薄布を通して届く月の光で、ぼんやりと輝く銀の髪。
金色の目をかすかに細めて、低い声が言う。
「・・・・うなされていた」
「はい・・・」
りんは、その胸の中に顔を埋める。
その暖かさにほっとして、すぐに涙はとまった。
暖かな幸せに、りんの口元がほころぶ。
「・・・ふふふ、懐かしい夢を見ちゃった・・・」
「・・・」
殺生丸の指が、優しくりんの髪を梳く。
地肌に触れる指の心地よさに、りんはうっとりとしてしまう。
怖かった夢が、嘘のよう。
「・・・ねえ、殺生丸さま」
「・・・なんだ」
「りんが小さな頃、音獄鬼っていう妖怪に拐かされたときのこと・・・覚えてる?」
「・・・ああ」
「あの時、殺生丸さまが助けに来てくれて、りんに「好きにしろ」って言ったの。
・・・殺生丸さま、覚えてる?」
「・・・・」
殺生丸は胸の中に顔を埋めたままのりんを見る。
髪を梳いていた指が、りんの顎をとらえ、上を向かせた。
桜色の唇に、柔らかな口づけが落ちる。
ついばむような口づけは、やがて深くなり、何度と無く繰り返される。
いつの間にか、りんは両手首を捕まれて、組み敷かれていた。
たくさん、たくさん、口づけが落とされて、りんは幸せで泣きそうになる。
まぶたに、頬に、耳たぶに、おでこに。
首筋を唇が這うと、りんは堪えきれずに、か細い甘い声をあげた。
「・・・・っ」
甘い刺激に、これから起きることを予感して、全身が粟だってしまう。
殺生丸は、そんなりんの耳の側で囁く。
「・・・もう「好きにしろ」とは言わぬ」
「・・・せ、しょうまる、さま・・・・」
「お前は、私のものだ。 ・・・好きになど、させぬ」
そう言うと、柔らかな唇が鎖骨の上を強く吸った。
甘い痛みが、りんを縛る。
「・・・・あ・・・だめ・・・」
跡が残っちゃう、という言葉は、すぐに口づけで封じられてしまった。
深い口づけを交わしながら、りんの夜着の帯が、殺生丸の長い指にするりと解かれる。
絹の夜着は柔らかく滑らかで、帯がなくなると、あっというまにはだけてしまいそうになる。
・・・・ほろり、とりんの瞳から涙が滑り落ちた。
(・・・・・甘露の匂い)
ふわりと漂った涙の匂いで、りんが泣いていることに気が付いた殺生丸は、帯を手にしたまま、
怪訝な表情をして、りんの両頬を、その手のひらで包み込んだ。
「・・・・どうした」
「・・・・・・嬉し、かったの」
「・・・・」
「りん、あのとき殺生丸さまに、「好きにしろ」って言われて、すごく嬉しかったの・・・。
殺生丸さまと、ずっと一緒にいていいんだって思って、嬉しかったの・・・」
ほろほろと、りんの瞳から、涙がこぼれた。
その涙を、殺生丸の唇が吸う。
「・・・ふふふ」
りんは、たくさんの口づけを受けて、泣きながら笑っている。
「人里に残っても、あの言葉を思い出すと・・・大丈夫だって思えたの。
だって、殺生丸さまは、嘘はつかないもの・・・・。
りんが一緒に行きたいって言ったら、連れていってくれるって、信じてた・・・」
「・・・・私は、もう好きにはさせぬ、と言っている」
金色の目に間近で見つめられて、りんは、ふふふ、と笑った。
金色の目も、微かに笑いを含んでいるように見える。
「・・・覚悟するんだな」
「・・・・・はい」
妖が夜着を脱ぐ仕草で、薄い寝屋の帳が、ふわりと揺れた。
・・・美しい虫の音の響く秋夜の庭に、細い、甘い声が混じった。
終
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