殺りん話を、とりとめもなく・・・ こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。
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殺生丸さま一行×八百万の神々
アニメの豹猫族くらいの時系列で、
こんな出来事があっていいかな~なんて。
日本の神様は八百万といわれるだけあってたくさんいらっしゃるので、
りんちゃんが出会ってもおかしくないと思う・・・よ?
ちなみに邪見様が一度だけみたのは、例の、アレです。
神語り・・・水分神<1>
朝から降り続いていた雨はやんだが、濃い霧が出た。
主の命により、りんと邪見は山の中の荒れた神社の中で雨をやりすごしていた。
・・・つまるところ、留守番なのだが。
りんは、扉の隙間から外を見てため息をついた。
「すごい霧だなぁ・・・」
殺生丸は昨晩からいない。
「ここにいろ」
そう言い残して、阿吽に跨り飛んでいってしまった。
「殺生丸さま、まだかなぁ・・・」
りんは何度も繰り返された言葉を口にする。
「まったく、お前のために殺生丸様がここを探してくださったのだぞ。感謝せい、りん」
「うん、そうだね」
りんは神棚を背にして座っている邪見を見て、神殿の中をぐるりと見渡す。
荒れた神社はぽたぽたと雨漏りしていて、壁にも隙間がたくさんある。
だが、邪見がどこからか火鉢を見つけだして火を焚いたおかげで、
昨晩は寒さに震えることなく眠ることができた。
荒れているとはいえ、社は重厚な造りで、よく見れば格の高そうな社だ。
ここを祀っている村人たちの信仰の篤さが見て取れた。
・・・もっとも、ここへくる前に、水害にあってもぬけの殻となった村を通った。
道すがら人の絶えた村を見かけるのはよくあることではあったが、
心が痛んだりんは花を供え、小さな手を合わせてきた。
あの村の衆が祀っていた社なのだろう。
「ねえ、邪見様」
「なんじゃ?」
「ここね、結構立派なお社だよね」
りんは邪見の脇を指さした。
「ほら、色んな置物もあるし・・・」
邪見は両脇を見渡した。
神棚に一番近いところに木彫りの右大臣左大臣。
その下座には神狐やら、風化して何か分からぬような置物がごろごろと転がっている。
薄暗くてよく見えないが、天井には格子状に板がはまっていて、
一つ一つに極彩色で絵が描いてあるようだった。
ぼろぼろにはなっているが、神棚の前には御簾がかかっている。
「まあ、そうじゃの」
「里の人たちがいなくなっちゃったら、神様は寂しいね」
邪見は振り返って背を向けた神棚を見上げた。
「無用な心配じゃな」
飄々と言う邪見に、りんは首をかしげる。
「・・・どういうこと?」
「ここに神はおらん」
「え?そうなの?」
「嘘をいってどうするんじゃ」
りんは目をきらきらさせて邪見のそばへにじり寄ってきた。
「邪見さま、神様がいるかどうか分かるの?!」
邪見は呆れたようにりんを見る。
「お前なあ、ワシだって妖怪じゃぞ」
「え?」
「人間よりはずっと長生きしとるし、敏感じゃわい」
「・・・それじゃ分かんないよー。神様がいないのに、どうしてお社があるの?」
りんはぷぅ、とふくれた。
神に対する畏怖は、肌でびしびしと感じるものだ。
言葉にするのは難しい。
まったく、難しいことを説明させおるわい。
邪見はカリカリと頬をかいた。
「ここには特別な神域の清浄さも妖力も感じぬ、ということじゃ」
「そうなんだ・・・」
ころり、と転がった神狐の置物がなんだか可哀想に思えた。
「しかしまあ、神が存在しないわけじゃない。
この社には、今、いないというだけじゃ。
社によっては常に神が鎮座しておるところもあるし、
イノシシや鹿みたいな獣の姿で森の中におる神もおるしの」
「へえー、すごい!邪見様、物知りだね!!」
「お、おお、そうか~?!」
邪見は背筋を伸ばし、急に、えへん、などと言ってみる。
「しかしまあ、何にせよ、神にはむやみやたらと近づかんほうがいい」
「どうして?」
「どうしてって・・・」
邪見は、ため息をついた。
「よいか、りん。ここには居らなんだが、神ほど恐ろしいものはないんじゃぞ」
「・・・そうなの?」
「そうじゃ。気まぐれじゃし、やることがデカすぎてわしらには理解不能じゃし・・・」
(・・・あり?・・・殺生丸さまと同じではないか)
冷や汗をたらして口をつぐんだ邪見を不思議そうにりんは見る。
「邪見さまは、神様に会ったことある?」
邪見はぐっとつまり、ぼそりと言った。
「い・・・一度だけじゃな」
「えーーっすごい!!どんな神様だったの?」
「どんなって・・・」
「会ったんでしょ?」
興味津々のりんの目を避けて、邪見は斜め上を向いた。
「うっすらとしか、見えなかったわい」
「え~?!それって会ったって言わないよ」
「やっかましいっっ!出雲の神議りからの帰り道だったんじゃ!
真夜中に、山よりでかい透明の体で歩いておられたんじゃから、仕方なかろう!」
「山より大きな透明の体?!」
「そうじゃ。おまけに出雲の酒に酔っておられての」
「酔っぱらいだったの?」
「うむ。ワシらの住んでおった武蔵野の草原に差し掛かったとき、こう、ゲロゲロっとだな」
「えーーー!吐いたの?!」
「そうじゃ」
「うわぁ・・・」
りんは自分も気持ち悪そうに両手で口を覆った。
「そのゲロゲロで、朝には一つの山ができたのじゃ。
あっと言う間に草が生え木が生え、緑が茂った」
「えーっっ!!」
「ゲロゲロするときに踏ん張っておった足の下には湖ができたんじゃぞ」
「すっごいねー」
「そうじゃろー」
邪見はえへん、と咳払いをして、また方向が間違っていることに気づく。
「ま、まあ、つまりじゃ。神には神の世界があって、それはワシ等の感覚では計り知れぬ。
何が起きるか分かったもんじゃないし、巻き込まれては大変ということじゃ!」
りんは少し寂しげに首を傾ける。
「そうなんだ・・・」
「太古の神々ほどそういう恐ろしい力をもっておる。
めったに姿は現さぬし、現れたときは天変地異が起きて大変なことになる。
人間に寄り添って存在する神もおるが、そういう神はどちらかというと、
ワシ等みたいな妖怪に近い存在じゃな」
りんは嬉しそうに邪見の袖を引っ張った。
「じゃあ、殺生丸さまが神様でもおかしくないね!
りん、初めて殺生丸さまに会ったとき、神様だと思ったもん!!」
「・・・そうじゃな」
りんの嬉しそうな顔を見ていると、もはや神談義はどうでも良いことのように思えた。
少なくとも、りんにとって殺生丸は神のような存在なのだ。
まあ、自分にとってもだが。
殺生丸さまは、神様みたい、か。
なんだか2人で嬉しくなってへらへら笑った。
・・・その時。
社の空気がびりびりと震え、ばんっ!!と扉が開いた。
真っ白な濃霧が流れ込み、一瞬で前が見えなくなる。
「きゃーー!!」
「りん!!大丈夫か、りん!!」
邪見は慌てて手探りでりんを探す。
・・・が、その手がりんに届かない。
「どこじゃ、りん!!りん!!」
「邪、邪見さま~、前が見えないよ!!」
「りんっ無事か?!」
「うん、邪見さま、どこ?!」
「・・・見えぬのか」
「え?」
「はい?」
一つ混じった、知らない声。高く透明な女の声。
「・・・そうか、すまぬな」
ふわり、と風が頬をかすめると、濃い霧は一瞬にして消えた。
りんと邪見は驚くほど近くにいたが、お互いの姿が全く見えなかった。
風の吹いてきた方向をみると、社の真ん中に光り輝く女性がたたずんでいた。
真っ白な肌に青い目、漆黒の髪は腰まで下がっている。
肌も、髪からも光が漏れる。
不思議な着物を纏っていたが、
内側から漏れる光で着物が灯篭のようだ。
あまりの美しさにりんは目を見張り、言葉が出てこなかった。
びりびりと空気が震え、その場の気が変わっていくのが、邪見には分かった。
「あああああ、あの、あなたさまは・・・」
邪見が震える声で聞くと、その女性は笑みを漏らした。
「神に名を聞くか・・・」
「か、神?!」
邪見の声が裏返る。
神の名は、命と法則そのものだ。
言霊で縛れないゆえに、神はいくつもの名を持つ。
神の名は神にしか通じない。
「もももも、申し訳ございませぬっ」
邪見の中に、太古から息づく畏怖の念がこみ上げた。
「・・・人はわらわをミクマリカミと呼んでおったの」
「ミクマリカミさま・・・?」
りんは思わず一歩進んで神に近づいた。
「きれい・・・」
「り、り、りんっ!恐れ多いっっ!!近づくんじゃないっ!!」
邪見の大声に、りんはびくりと体を硬くする。
その時、りんの耳に心地よい低い声が響いた。
「おまえはこの社の神か」
「・・・殺生丸さま!!」
扉の向こうに浮いているのは、りんの待ち侘びた殺生丸のすがた。
神に対して恐れもせず、構えもせず、いつもの殺生丸のまま。
ミクマリカミはゆるゆるとあたりを見回した。
「・・・ひととき、ここは我の社であったところ」
「・・・」
「・・・我はここにはとどまれぬ。ゆえに、ここの神ではない」
「ミクマリカミさま?」
いつの間にか、りんはミクマリカミのすぐ側まで寄っていた。
殺生丸に目を奪われてりんに気が付かなかった邪見はひいっと声をあげた。
「人の子か・・・」
ミクマリカミはその青い瞳をりんに落とした。
「・・・名は何と申す?」
りんはにっこり笑った。
「りんって言うの!」
ミクマリカミから金色の光が粉のようにふわりと舞った。
絶世の美貌がとろけるように微笑んだ。
「・・・子は、好きじゃ」
続
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