殺りん話を、とりとめもなく・・・ こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 神成りとむすめ<6> | | HOME | | 神成りとむすめ<5> ≫ |
寿春のうさぎ
「 ふふふ、見て、殺生丸さま。可愛いでしょう? 今年は、卯年なんですって。
この子、「ぺっと」 にって、この前かごめさまから頂いたの」
「 ・・・・ぺっと・・・?」
「 食べるのではなくて、飼うんだそうです。・・・とても、人慣れしているの」
「 ・・・・・そうか」
「・・・でも、うさぎは、寂しいと死んでしまうんですって。
だから・・・たくさん可愛がってあげようと思います」
りんは伏し目がちに、下を向く。
「・・・それに・・・・」
「・・・?」
「・・・この子を撫でていたら・・・まるで殺生丸さまの側にいるみたいな気持ちになるの」
殺生丸は、目を細めて縁側に座った妻を見つめた。
昨夜遅く、帰ってきた殺生丸を出迎えた時のりんの嬉しそうな表情が浮かぶ。
殺生丸を待っている姿は、幼い頃より変わらない。
・・・・口には出さないが、もしかすると妻は寂しがっているのかもしれない。
・・・・・私の白尾の手触りを、こんな小さな兎に求めるほどに。
「――――― りん」
「 ・・・・はい」
新春のために殺生丸がりんに贈った深紅の衣は、りんの肌の白さを際立たせ、
衣に合わせて唇にのせた紅は艶やかに、柔らかな光を放っている。
・・・その艶やかさに誘われるように殺生丸は腰を折り、縁側へ腰掛けているりんの口元へ、
ゆっくりと唇を寄せた。
新春の暖かな陽だまりの中で、ゆっくりと数度、唇が重なり、りんの頬はほんのりと染まる。
りんの膝の上で、うさぎが小さく身じろぎをした。
「 ・・・・・・りん・・・」
「 ・・・・・はい」
殺生丸の長い指が、りんの膝上にいた兎を掬い、そのまま庭に放した。
放たれた兎は庭の草へ向かって、ぴょん、と跳ねる。
「――――・・・私が屋敷にいる間は、兎は庭にでも遊ばせておけ」
殺生丸はりんと並んで縁側に腰を下ろすと、そのままりんの膝を枕に、ごろりと横になった。
透き通った美しい金色の目が、膝の上からまっすぐにりんを見つめる。
「 ・・・・・殺生丸さま・・・?」
吸い込まれそうな金色の目で間近に見つめられて、どぎまぎしながらも、
りんは、もしかして殺生丸さまはうさぎが嫌いだったのだろうか、と不安になった。
そんなりんの些末な不安を拭うように、殺生丸はその手を伸ばし、そっとりんの頬に触れた。
・・・美しい妖の口元が、微かにゆるむ。
「 ・・・・私はこの場所を、兎なぞに渡すつもりはない」
「・・・・・・・・殺生丸さま・・・」
新春の庭の陽だまりの中、二人の傍でうさぎはゆっくりと草を食んでいる。
きっと、殺生丸は妖気を抑えているのだろう。
・・・・・りんの 「 ぺっと 」 のうさぎが、怯えてしまわぬように。
「 ・・・・・ありがとう・・・殺生丸さま・・・」
夫のさりげない優しさと膝上の頭の重みが・・・・とてもとても、愛おしかった。
終
新婚さんの初春でした。
りんの膝枕は、殺生丸だけのもの。
このウサギ・・・・・多分、オスじゃないかな(笑
≪ 神成りとむすめ<6> | | HOME | | 神成りとむすめ<5> ≫ |