殺りん話を、とりとめもなく・・・ こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。
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「大丈夫」
りんは、そう繰り返した。
私に向かって、何度も、何度も。
「大丈夫だよ」
どうしてそう断言できる・・・?
なにが大丈夫なのだ。
お前は、知らぬのだ。
―― わたしの苦しみは、お前が去った後に訪れる。
「…また、会えるから……」
お前はそういって、微笑むだけだった。
「…また、絶対に会えるから……」
りんの記憶は、その儚い命とともに消えるだろう。
…りん。
記憶を失ったお前が、どうやって私を見つけるというのだ…?
生まれ変わっても、お前が同じ姿とは限るまい。
どのような姿になっているかも分からず、声も言葉も違うかもしれぬ。
それでも、いい。
逢えるのならば、いい。
だが、それは叶わぬかもしれぬ、残酷な夢ではないか――。
私はりんを失い、けして癒えぬ悲しみを抱え、闇の中を歩いていくのだ。
…もはや、生きることに何の価値があろう。
「―― りん…」
それでも、私はただただ、お前の名を呼ぶことしかできなかった。
…己の内を焦がす絶望と悲しみを、隠したまま。
「…大丈夫…だから、待ってて…」
「殺生丸さまの…ままで……待ってて……」
そう、お前に微笑まれてしまっては。
「 …お願い……ね……」
――― お前が微笑んだまま、呼吸を止めて。
再び縁が巡るまで、私は永い永い時を、待つこととなった。
いまわの際の、りんの言霊だけを絶えず繰り返しながら。
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