殺りん話を、とりとめもなく・・・ こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。
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完結篇にて、原作には無いセリフがありました。
「邪見さまはちっちゃいよ!背も、心も、性格も!」
私は思いました。
りんちゃんは、そんなこと言わない。・・・もとい、言ってほしくない。
邪見さまのことも、大好きなはずだもの。
私の中では、りんと邪見の関係は「病気になったあの邪見」に描ききられてると思うから。
いや、そう思いたい。
けど、どーーしても、言うとしたら、どういう背景があったんだろう。
りんちゃんが、邪見さまに対してそんな気持ちをもつんだとしたら・・・?
つらつら、考えました。
舞台は、『黒い鉄砕牙』『正統なる後継者』の、直前。
かごめいわく、「小さい人ばっかりの所を襲われた」直後です。
みんなが、殺生丸を待っている時間。
賑やかな輪の中で
かごめは全員をぐるりと見回した。
全員が勢揃い、という感じである。
戦国最強の大妖怪を除いて。
「ま、仕方ないわね。
殺生丸がいつ戻ってくるか分からない以上、私たちが一緒にいなくちゃ危険そうだし・・・
もうすぐ日も暮れるし、せっかくだからみんなでご飯にしましょ!
さ、りんちゃんも琥珀くんも、好きなもの選んでね!」
かごめがリュックサックの中からバラバラと出したインスタント食品をみて、りんは目を丸くした。
「わぁすごい・・・かごめさま、これはなぁに?」
前に、冥界の剣をめぐってかごめたちと一晩洞窟であかすことになったことがあるが、
その時は皆で魚を捕って食した。
りんがかごめの現代食をみるのは初めてである。
「ふふふ~、これはねえ、お湯を注ぐとすぐできちゃうご飯なのよ。
現代から持ってきたの」
「すご~い・・・こんなの初めて見たぁ」
「この時代にはちょっと画期的よね」
りんは遠慮がちに訊いた。
「りんも食べてもいいの・・・?」
「あったりまえじゃない、遠慮なんていらないわ。
そうねえ、このお味噌汁飲んでみる?」
りんは、ぱっと嬉しそうに笑顔を浮かべた。
子供らしい純粋な好奇心で目がキラキラしている。
「お湯を入れるだけのお味噌汁かぁ、すご~~い!!
でも、お味噌汁ってずいぶん久しぶりだなぁ・・・」
かごめはちら、と背を向けて座っている邪見をみて、心配そうにりんに聞いた。
「ねえ、りんちゃん」
「なぁに?」
「ずっと気になってたんだけど、殺生丸や邪見と一緒にいて、困ったりしてない?
ちゃんと、ご飯食べてる?」
「うん、お魚とったり、山菜やキノコとったりしてるの。
今は琥珀が一緒にいるから、色々食べるものが増えたんだ。
こないだは鎖鎌でイノシシ捕まえたし」
りんはにっこり笑った。
「邪見さまがいると、火もすぐ焚けるし!すごく助かるの!」
「あの杖ね?」
「そう!人頭杖っていうの。あと、温泉も!」
「・・・温泉?!」
「そう、なんかよくわかんないけど、邪見さまがお札みたいなの貼ったら湧き出すんだよ~!!」
「へえ~~!!」
りんの話にかごめ達は少なからず驚いた。
よく見れば、りんの肌はつやつやしていて見るからに健康そうである。
着物も、織りのしっかりした小綺麗な紬を着ている。
何着も着替えているふうでもなさそうだが、汚れている感じはまったくしない。
きっと、その温泉とやらでじゃぶじゃぶと洗っているのだろう。
そういえば、家族で行った温泉地の看板で、
ぬるぬるしたアルカリ性の温泉は石鹸と同じ効果があると書いてあったような気がする。
(お湯で洗えば下手な洗濯よりきれいになりそうね)
かごめは安堵したと同時に、色んなことを想像する。
(そっか・・・。使い方次第で、人頭杖は強力な乾燥機になるわよね・・・。
まあ、ひとつ間違えば燃えちゃうけど・・・)
万に一つそんなことになれば、邪見には主から鉄槌が下るわけで、
火をつけぬように必死にりんの着物を乾燥させている邪見の姿が、
かごめには容易に想像できた。
殺生丸と温泉は、どう頑張っても結びつかないが。
(人間の女の子に妖怪がこうまで気を使ってるなんて・・・)
苦笑せざるを得ない。
(昔は本当に冷酷そのものだったのに・・・)
「ねえ、邪見さまー、火をつけて」
「な・・・人間どもの為にどーしてワシがっっ」
「もう、そんな小っちゃなこと言わないで、ね?」
「ち・・・ちっちゃいじゃと~~!!」
「邪見さまにも、りんの分のお味噌汁、分けてあげるから!」
「い・ら・ん・わーーー!!」
小さな体で跳ねながら怒る邪見に七宝が呆れたように言った。
「全く、器の小さなやつじゃな。
りん、おらが狐火で火をつけてやろう。
湯を沸かすくらいお手のもんじゃ」
「なっ何を~!!バカにしおってっっ!!
狐火ごとき、人頭杖の力に勝てると思っておるのか?!目にものを見せてくれるわ!
薪はどこじゃっ!?りん!!」
・・・完全に、妖力自慢競争となっている。
「はい、邪見さま、ここに!」
りんが指さしたのは、弥勒と珊瑚がちゃっかり積んでおいた薪。
カッと人頭杖を構え、邪見は不敵な笑みを浮かべて向き直った。
「人頭杖の力、とくと御覧じろ!!」
翁の目が開き、口が開き、その闇の中から深紅の業火があたりを覆った。
・・・明かに、強すぎる火力で。
「・・・あ~あ・・・」
「・・・・ちょっと、邪見!」
「せっかくの薪が無駄になってしまいましたねえ、珊瑚」
「ホントだね・・・」
「じゃから、オラがやってやると言うたのに・・・」
「邪見、おめえ・・・」
目の前には、真っ白の消し炭になった薪。
りんは自分の招いた事態にしゅんと落ち込んだ。
皆の役に立ちたかったぶん、嬉しい気持ちが急にしぼんでいく。
「・・・邪見さま、火が強すぎだよ・・・」
「ふ…ふんっっ!!文句があるなら殺生丸様に言えっっ」
「小さいのう・・・」
「小さいわね・・・」
「小さいですな・・・」
「もう、邪見さま・・・ひどい。
せっかくかごめさまがご飯に誘ってくれたのに・・・りん、迷惑かけちゃった・・・」
りんの声は潤み、涙声になっていく。
「・・・り、りん!?わーっ!!な、泣くなっ!!」
「邪見さまのばか・・・」
「な、泣くなと言っとるじゃろ!殺生丸様にお叱りをうけるではないか~~!!」
泣き出すりんのそばで焦ってオロオロする邪見をげしっと踏みつけて、
犬夜叉がりんの頭をくしゃり、となでた。
「心配すんな、後ろを見ろ」
りんが涙目で後ろを振り返ると、笑いをこらえて変な顔になっているかごめと弥勒がいた。
珊瑚と七宝は震えて後ろを向いている。
笑いをこらえた震える声でかごめが声を掛ける。
「・・・りんちゃん、いいからとりあえずご飯にしましょ・・・」
「ぷーーーーっっ」
弥勒と珊瑚と七宝が同時に吹き出し、大笑いした。
「あー、もうだめ!!」
「いやー、いいものを見れましたなあ」
「ほんとー」
「邪見がりんにかたなし!」
「なっさけないのう、邪見!!」
「なっ・・・なっなんじゃとーーー!」
犬夜叉の足の下で憤慨する邪見を見て、また皆笑った。
犬夜叉はりんを見て、ぶっきらぼうに、照れくさそうに言った。
「俺たちに気を使う必要ないぜ」
りんは、犬夜叉を仰ぎ見る。
太陽の光で犬夜叉の髪が銀色に光った。
絶対の信頼を寄せる、殺生丸さまのおとうと。
りんは、はっとした。
ぶっきらぼうな優しさ。
そこに感じる、孤独を味わったものだけが分かる、直感的な何か。
りんも味わったことがある、人里での癒されない孤独。
「犬夜叉さま・・・」
りんは、ますます泣きそうになった。
嬉しいのに、泣きたくなるって、変だ。
こころが、ほっこりと暖かくなる。
かごめが笑い涙をぬぐいながら、りんの肩に手をかけた。
「そうよ、りんちゃん。そんなに気を使わないで」
犬夜叉もりんへ照れくさそうに優しい笑顔を向けた。
「ほれ、メシの準備してこいよ」
「・・・はい!」
かごめに促されて後ろを向くと、すでに七宝が手早く集めた薪に雲母が火をつけていた。
琥珀は湯を沸かす為の竹を鎖鎌で切っている。
弥勒と珊瑚が明るい笑顔で声を掛ける。
「こちらにいらっしゃい、りん。こんなことで泣くことはありませんよ」
「そうだよ、こっちおいで。お腹すいてるんじゃないのかい?」
「いやー、殺生丸殿もこれなら日々にぎやかでしょうね」
「想像つかないけどねぇ」
「りん、かごめの国の食べ物は作るときにほんのちょとフタをあけることがコツじゃぞ。
おらが教えてやろう!」
りんはかごめに促されて賑やかな輪の中に加わった。
ほんのひとときの、賑やかな、優しい人達との時間。
犬夜叉は踏み付けた足を上げると、邪見はのろのろと立ち上がった。
「・・・ふん」
背を向けて、座り込む。
「おい、邪見」
「なんじゃい」
「・・・ま、たまにはいいんじゃねえのか」
「何のことじゃ」
「・・・」
応えのない犬夜叉に、邪見は怪訝な目を向け、ため息をついてまた背を向ける。
犬夜叉は、背を向けて去っていった兄のことを思った。
『死ぬまで、戦い続ける運命にある』
そう言って、立ち去った兄のことを。
・・・俺にはどうしてなのかは、分かんねえけどよ。
オヤジが一体、何を考えていたのかもよく分からねえ。
けど、ま、あいつを待ってる時間が穏やかなのは、昔では考えられなかったことだ。
「・・・いいんじゃねえの」
邪見はちらりちらりとりんの様子を見ている。
気になって仕方がないという感じである。
犬夜叉は、ごろりと寝転がった。
夕焼けが広がる。
カップラーメンを見て、はしゃぐりんの声が聞こえた。
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