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あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

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従僕の独り言

邪見様にりんちゃんについての独り言をたくさん喋ってほしくて。
りんちゃんは邪見さまに育ててもらったようなもの・・・と、
私は勝手に思っていたりします。
手の掛かる子ほど可愛い。


従僕の独り言

拍手[88回]

月が高く昇り、森の中に露が降り始めた。

今夜は冷える、と我が主は言い残し飛び立ってしまった。
わしとりんを、廃寺に残して。
森の中で野宿するより良かろうとのお心配りじゃろう。
寺の中は埃だらけじゃったが、具合のいいことに小さな囲炉裏があったので、
今晩はそこで火を焚いて寝ることにした。
りんは昼間の疲れがでたのか、くうくうと寝入って居る。

時折、獣が森でうごめく気配がするが、
火を焚いている気配がするせいか近づいては来ぬ。
まあ、殺生丸様の妖気が残っておるかぎり近づけぬじゃろう。

邪見は囲炉裏の火に赤く照らされたりんの寝顔をしばらく眺めた。

・・・りんがわしらについてくるようになって、どれくらいたったのじゃろ。
まだ季節は一巡しておらんから、たいして時はたっておらぬじゃろうな。

りんと殺生丸様。
なんともまあ、不思議な組み合わせじゃ。
昔の殺生丸様では考えられぬ。
人間の娘を連れ歩くなど。

あれは、鉄砕牙をめぐり殺生丸様が犬夜叉から返り討ちにあった時のことじゃ。
突然、戦いの最中に消えうせた殺生丸様を探し、やっと見つけたと思ったら、
何の気まぐれか殺生丸様は狼に咬み殺されて死んだ人間の子娘に天生牙を振るわれた。
わしは腰を抜かさんばかりにおどろいたが、
それよりも驚いたのはその人間の子娘が迷わず殺生丸様の後を追ったことじゃった。

いったい、ワシのおらぬ間に何があったというんじゃ。
殺生丸様はりんが付いてくることを咎めぬどころか、
死んだときに着物に付いた血のにおいが不愉快だから
ワシにりんの新しい着物を持ってこいと仰る始末。
このワシが、人間の小娘の世話!!
人間というのはすぐに腹が空くらしく、りんは食べるわ食べるわ、
食べたと思ったらすぐ寝るわ、めまぐるしいことこの上ない。
おまけに、よう喋りおる。
りんが言うには人里におった頃は口が利けなかった、と。
ニコニコ笑いながら「どうしてお話できるようになったのかなぁ?」じゃと。
アホか。
天生牙のお力に決まっておろう。
狼に喰い殺されたことは覚えておったが、
「言うことを聞かんと狼がくるぞ!!」なーんてそのことを思い出させると、
りんは夜になると怖がって眠れなくなるんじゃな、これが。
ワシの方が日々の気苦労からか先に寝てしもうて、
目が覚めるとりんは殺生丸様のそばで丸くなっておったり、
モコモコにくるまれて寝ておった。
りんの顔に涙の跡があった朝は、殺生丸様の機嫌が悪いんじゃよ・・・。

多分、殺生丸様はあれで、りんが可愛いのじゃなあ。
そんなことは恐ろしくて聞けぬし、まあ、無視されるじゃろうが。
考えてみれば、ワシ以外で純粋に殺生丸様を慕うものなどりんくらいのものじゃ。
そのワシでさえ、ご機嫌次第で殺されるかもしれぬとびくびくしておるし。
「殺生丸様は優しい」などと寝ぼけたことを本気で信じておるのはりんくらいのものじゃ。
あの凍り付くような殺気も強大な妖気も、りんにかかれば「強いし」になってしまうし、
あのとんでもない無口も「優しいしかっこいい」になってしまうんじゃからな・・・。

もともと、われら妖怪は人間との共存を望まぬ。
人間は、命が短いし、体も脆く弱い。
共に生きることを望んだところで、それに応えられる存在ではないのだからな。
それでも、その人間の短い生命に付き合おうという物好きな妖怪はおるものじゃ。
殺生丸様のお父上と犬夜叉の母もそうじゃったのじゃろ。
妖怪と人間が時を重ねて共に生きることは、別に珍しい話ではないわい。
妖怪や神と人間が番(つがい)になった話を、
人間どもは昔語りとか神語りなどと言っておるが、
わしら妖怪にとっては、少し前の話というだけじゃ。

だが、我が主の殺生丸様に限っては、絶対にあり得んはずじゃった。
気まぐれでも、人間が共に道行きをするなんぞお許しになるはずがなかったのじゃ。
なんせ、人間をあれほど嫌っておいでだったのじゃからな。
人間の女、犬夜叉の母のせいで尊敬していたお父上を亡くされ
倒すべき最強の目標を無くされた。
もっとも強い大妖怪になることしか考えておられなかった殺生丸様にとっては
許せない出来事じゃったろうな。

その殺生丸様が、まさか人間の小娘を連れ歩くなど誰が想像できる?

邪見はため息をついて、りんの寝顔を見た。
・・・今日はいい夢を見とるんじゃろ、時々笑っとるわい。

・・・殺生丸様は、この先りんのことをどうされるおつもりなんじゃろ。
ワシが人里に残しましょうと進言しても、ちっともお聞き入れ下さらなんだ。
一度、畑に野菜泥棒に入ったときにこっそり置いてこようと画策したんじゃが、
一人で戻ったワシを見て、殺生丸様は自らりんを探しに行かれてしまわれた。
殺生丸様に連れられて戻ってきたりんは、邪見様に置いていかれたとわんわん泣いて、
ワシは大目玉をくらったのう・・・。
嫌な思い出じゃわい・・・。

殺生丸様の決めたことには従うしかないんじゃが、
まあ、その、正直にいえば、もう認めてもいいと思っとる。
つまり、今はワシもりんのことが可愛い。
なにやら、家族のような気がしておる。
もしも、殺生丸様がりんを人里に返すなんて言い出したら、
いてもたってもおられんじゃろうなぁ・・・。

人間の短い生命に付き合おうという物好きな妖怪に、ワシもなってしまったんじゃろうか。
殺生丸様が、りんをずっとそばに置いてくれればいいと思うようになってしもうた。

囲炉裏の火が小さくなってきた。
もう少し、火を焚いておいてやるか。

邪見は立ち上がって、りんの寝顔を見た。
むにゃむにゃと何かをいいながら、笑っている。

・・・まったく。
主ともども、人間の小娘一人にしてやられたわい。

邪見は苦笑した。



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