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あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

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夕餉のひととき

殺生丸さまご一行が、夕餉を向かえたときの、ひととき。
母上の城から帰ってきた頃でしょうかね・・・。
琥珀目線です。




夕餉のひととき

拍手[62回]

ぱちぱち、と木のはぜる音がした。
りんの集めてきた木の葉が小枝と共に勢いよく燃えていく。

琥珀は手際よく小枝から作った串を鮎に刺した。
夏の終わり、丸々と太って脂ののった落ち鮎はさぞかし旨いだろう。
りんと邪見と、三人で捕った鮎。
両の手のひらに収まらない大きさの鮎を16匹も捕った。
今夜はこれで腹一杯になるだろう。
あとは、りんが暖かい白湯が飲めるように竹を切ってきてやろう。
焚き火の近くで水を入れて地面に刺しておくと、湯が沸く。
退治屋の里にいた頃は、大人は酒を入れて竹酒を楽しんでいたものだ。


琥珀は立ち上がり、そばに流れる小川で手をゆすいだ。
水が冷たく、すぐに秋がくることを思い出させる。

「いつまで・・・」

殺生丸と共にいくことを決めて、
りんと邪見と阿吽との道行きは思った以上に楽しかった。

この一行は殺生丸を中心にしているが、
必然、道行きすがら狩りや食材の調達があったり、
少なからずりんの行動に付き合うことになる。

育ち盛りの子供(琥珀もそうだが)と過ごしていると、
もう長い間忘れていた感覚が、自分の中に戻ってくるのが分かった。

今日は、鮎が捕れて大喜びしているりんにつられて笑っていた。
ぼたぼたに濡れそぼった邪見がくしゃみをしているのを見て、
またりんと共に笑った。

心の中の、欠けた部分が優しく修復されていく。

でも、いつまで、一緒にいられるだろう・・・?
そんな資格、本当は俺にはない。

「琥珀?どしたの?」

小川の中で手を浸したまま物思いに沈んでいた俺に、りんが声を掛けた。
りんは山で見つけたしめじ茸を串に刺している。

「なんでもないよ」

俺は笑顔で答えた。

「竹を切ってきてやるよ。暖かい白湯、飲みたいだろ?」

邪見が適当に小枝を焚き火に放り込みながらつぶやいた。

「…酒があったらいいのになー」
「邪見様、盗みは自信がありません…」
「邪見様、欲しいなら自分で取りにいきなよー」
「や…やかましいわいっっ」

俺がまた、笑える日がくるなんて。

りんは最後の串を刺し終えると立ち上がり、
ぱたぱたと少し離れた岩に座っていた殺生丸へ駆け寄った。

「ありがとう、殺生丸さま! 
 鮎を捕らせてくれたおかげで、今日はごちそうなの!」

えへへ、と笑ったりんの頭に、ぽん、と殺生丸の手がのせられる。

「…そうか」

幸せそうに笑うりんの笑顔を見て、俺は竹を切りに山へ足を向けた。
殺生丸と共に旅をすることを決めた日のことを思い出す。


あのね、琥珀
殺生丸さまはね、すごーく優しいんだよ
そしてね、すごーく強いの!
だからね、きっと大丈夫だよ
殺生丸さまは、きっと奈落から琥珀を守ってくれるよ
だから、そんな悲しそうな顔しなくても大丈夫だよ
りんはね、何回も殺生丸さまに助けてもらったの
悪い人に連れ去られた時も、
妖怪に拐かされたときも、
殺生丸さまはちゃんと助けにきてくれたの
だからね、絶対に大丈夫!!


そうだな、りん。
本当に、その通りだった。
だけど、殺生丸様が優しいのは、きっとりんがいるからだ。
俺が、笑顔を取り戻したように。


そうだな。
俺にはそんな資格、ないんだ、本当は。

…でも。

少しでも、長く一緒にいれたらいい。

一緒に、いれたらいいな。





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