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あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

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さいごの花火<3>

かごめは、りんちゃんのことを妹みたいに思ってると思う。
りんも、かごめのことをお姉ちゃんのように、思ってると思う。
私も、妹が幼い頃にさんざんやりましたが、
姉にとって妹は、リアル着せ替え人形でした(笑
そんな思い出を、織り交ぜながら。




さいごの花火<3>

拍手[48回]

りんは水にさらしていた薬草を川辺の平たい石の上に広げると、
帯にからげていた着物の裾をおろし、襷をとった。
かすかに汗ばんだ額を拭って、空を見上げる。

それは、どこまでも澄みきった秋の空。

今晩は十五夜で、殺生丸さまがきてくれる。
(・・・晴れて、よかった)

晴天の空の下で、りんは大きく背伸びをした。




村の人が使う川よりもさらに上流へいくと、こんこんと湧き出る清水がある。
かつてこの村にいた強い霊力の巫女、桔梗が水垢離をしていた祓所とのことで、
村人は敬意を払い、よほどのことがない限りここの清水は使わない。
だが、楓やかごめ、そしてりんは、薬草を作るときにこの清水を使う。
楓は、ここの澄みきった清水で洗った薬草を乾燥させて、
またこの清水を使って煮出すと、とても良く効く薬湯ができるのだとりんに教えてくれた。

最近、地念児が村に来てくれるおかげで、ずいぶんと作られる薬の種類が増えた。

りんが楓から人里で教わっていることは沢山あるが、
一番好きなのは薬草に関わることだ。
りんやかごめが丹精込めて作った薬湯は評判が良く、
最近では遠くの村からわざわざ求めにきた人がいるほどだ。

自分が誰かの役に立てているのだと思うと、りんは本当に嬉しかった。
考えてみれば、自分が働いて誰かが喜んでくれるなんて、初めてなのだ。
まだまだ楓やかごめの手伝いなんだとしても、
それに関われていることが、りんには誇らしかった。

その嬉しさゆえか張り切りすぎて、夏には川の中で作業をしすぎて体を冷やし、
めったにひかない夏風邪をひいてしまった。

りんが熱を出して寝込んだ日、
普段は村から離れたところに会いにくる殺生丸が楓の小屋に直接空から降り立った。
十五夜の日でもないのに、だ。

寝床で熱にあえいでいたりんが、額に触れたひんやりとした手の感触に目を開けると、
眉をひそめた殺生丸がいて、とても驚いた。

りんはとっさに、殺生丸は無理をして来てくれたのだと思った。
十五夜でもない日に、それも人里まで来てくれるなんて、と。

のどが腫れて痛くて、ちゃんと声がでなかったが、かすれ声で何度も謝った。
「ごめんね、殺生丸さま、ごめんね・・・」
殺生丸を見ていると、ただただ、ぽろぽろと涙がこぼれた。

涙がでるのは熱で体が苦しいからなのか、来てくれたのが嬉しかったのか、
それとも申し訳なかったのか、いまだに自分でも分からない。

ただ、熱にあえいで朦朧としていたとはいえ、
単なる風邪であんなに泣いては、よけい心配させるだけだった、と思う。

あの時の殺生丸さまのご機嫌は、とても悪かったらしくて、
後で邪見からずいぶんグチをこぼされた。

・・・結局、いつも心配させてばかりなのだ。

りんの中から、その思いが消えない。

・・・りんが、殺生丸さまにできることって、何だろう。

考えても考えても、切なくなるほどに思い浮かばない。
皆に喜んでもらえる薬草だって、殺生丸には必要のないものだ。
村の人が頑張って作っている畑の作物、村の女の人が織っている布地、
そして、それらを買うためのお金。

殺生丸はなにも必要としていない。

旅をしているときにりんが殺生丸から感じたのは
「より強くなる」という意志だったように思うが、
どう考えてみても、爆砕牙を得た今の殺生丸は、誰よりも強い。

りんができることは限られているが、それ以上に殺生丸の喜びそうなものを思いつかない。


そんなとき、かごめが「線香花火」を作ろうと言い始めた。
どんなものか、さっぱりりんは分からなかったが、とにかく手伝うことになった。

犬夜叉に頼んで取ってきてもらった硫黄をすり鉢ですりつぶし、囲炉裏の天井についた炭と、
弥勒が物の怪退治で商人からお礼に貰った(巻き上げた?)硝石粉。
かごめが慎重に配分をして混ぜたものを、短冊状の薄い和紙の先にほんの少し包み、
そこからこよりにしていく。
りんは器用なのか、慣れると誰よりもうまく作ることができて嬉しかった。

あっというまにたくさんの花火ができて、皆を集めて線香花火大会が開かれた。

ちりちりと細かい花のような火をとばしながら丸くなっていき、
あっと言う間にぽたりとおちる花火。

・・・闇夜の中に、儚げに咲く花。

りんは、自分の作ったものがこんなに綺麗なものだとは想像もしていなくて、
初めて見たときには感動して涙がでそうになった。
あのただの硫黄の匂いのする黒い粉から、こんな美しい火の花が咲くなんて、と。
嬉しくて嬉しくて、何度でも見ていたかった。

かごめから「りんちゃんも、やってごらん」と、何度も言われたが、
りんは困ったように笑って、「もったいなくて」と言った。
誰かの線香花火を見ているだけでも、充分幸せだった。

そして、ふと思ったのだ。
これなら、殺生丸さまも「綺麗」って思ってくれるかな、と。

りんは、綺麗なものを見たときには嬉しくなる。

野の花や、真っ赤な夕焼けや、雨上がりの大きな虹。
殺生丸はりんが喜ぶものに、ことさら興味は示さなかったが、
法師さまから、
「この線香花火はかごめさまの国から伝わったものなんです。
 私たちが暮らすここには、本当は無いものなんですよ」
と聞いた。

ということは、殺生丸さまも見たことがないのかもしれない。

・・・喜んでくれるかどうかは、分からないけれど、
りんが作ったと言ったら、少しは興味を持ってくれるだろうか。

「殺生丸さまにも、りんの作った花火、見て貰いたいなぁ・・・」

ぽつりと呟いたりんの願いを、かごめは喜んで応援してくれた。
『次は夜に会いに来て』ってお願いしてごらん、と。

あのときかごめに貰った線香花火は丁寧に紙に包み、
殺生丸から贈られた桐の文箱に大切にしまっている。
桐の文箱は驚くくらい蓋がぴっちりと閉まり、
この見事な手仕事が湿気も虫も寄せ付けないのだと、自慢げな邪見から聞いた。
本当は手紙を入れるものらしいのだが、
殺生丸は手紙を書いてくれないし、りんにも読めない。
結局、この文箱は使われることなく葛籠の中に納められていたのだが、
線香花火のおかげで初めて役に立ったのだった。



りんは、石の上に広げている薬草を裏返した。

晴天の空の下、河原の石の上で、薬草はあっという間に乾燥していく。
裸足で歩くのは熱いくらいに、石は暖かい。
葉の薄い薬草は、もうカラカラに乾燥していた。
りんは手際よく種類ごとにまとめると、持ってきたカゴの中に入れ、立ち上がった。

楓の小屋に向かって歩き始めながら、
邪見さまが迎えに来てくれるまでに、出来る仕事はなんだろうと考える。

殺生丸さまが来てくれること、線香花火のことを考え始めるとドキドキしてしまう。
落ち着くために、少しでも何かしていたかった。







薬草作りの作業から楓の小屋に戻ったりんを待ちかまえていたのは、
目をキラキラさせたかごめだった。

「あたし、こういうの夢だったの!妹が欲しいって、小さい頃からずっと思ってたから」

かごめはりんから薬草の籠を取り上げると、
思わずりんがたじろぐほどの笑顔で、あれでもない、これでもないと、
着せかえ人形よろしく、りんの着物を選びはじめたのである。

「あ、あの・・・?」
戸惑うりんに、かごめはニコニコしながら、
「今日は、花火の日でしょ?」
という。

「あたしの住んでた現代ではね、花火大会の時は、女の子は浴衣を着て髪をあげて、
 お洒落して出かけるものなのよ。
 まあ、線香花火じゃ花火大会というわけにはいかないけど、
 りんちゃんも、たまにはお洒落するのもいいんじゃないのかな~、と思ってね」

うふふ、とかごめは嬉しそうに笑う。
「だって、りんちゃん、殺生丸からもらってる髪飾りもぜんぜん使ってないでしょう?」

りんは申し訳なさそうに頷く。
「はい・・・使い方が分からないし、それに、りんには似合いそうもなくて・・・」

自信なさそうに言うりんに、かごめは手を胸に当てて高らかに宣言した。

「大丈夫!任せてちょうだい!!」




かくして、秋らしい葡萄模様が控えめに織り込まれた薄桃色の紬の着物に
濃い蘇芳色の唐草文様の帯が合わされ、ふんわりとに結い上げられた髪には
紅珊瑚の丸かんざしが選ばれた。


「・・・・よし!!ばっちりね~!!」


かごめは赤い紅珊瑚の丸かんざしをそっと差し込むと、出来上がりに満足の声をあげた。

「ほう・・・!これはまた、よく似合っとるのう」

「でしょ?楓ばあちゃん」

楓も感嘆の声をあげ、かごめは満足げに頷いた。

いつも、そのまま下ろしているりんの髪が、
かごめの現代の技によってふんわりと結い上げられたのである。
殺生丸から貰うばかりで、一度も使われたことのない髪飾りは沢山あったが、
一番りんに似合いそうな紅珊瑚の赤い丸かんざしを、かごめは選んだ。
人差し指と親指で丸を作ったくらいの大きさの平たい紅珊瑚に、細かな細工が施されている。
見る人が見れば、滅多に手に入らない良い品だということがわかるが、
その可愛らしい丸い朱色のかんざしは、
子供でもなく、だからといって嫁にいく年齢には満たない、今のりんにぴったりだった。

部屋の隅には、鏡を見て驚いているりんがいた。
いつも眺めているだけだった髪飾りが自分の髪を飾っている。
艶のある黒々としたりんの髪に、朱色の紅珊瑚は驚くほど良く映えた。

「かごめさま、ありがとうございます・・・!」

りんは嬉しそうに鏡から顔を上げた。

かごめはりんを見ると、頬に手を当てて思わずため息をついた。
たとえ現代で見かけたとしても思わず目を引くであろうと思うくらい、
りんは楚々として可憐だ。

「本当に、よく似合うわ。殺生丸って、りんちゃんのこと、よく分かってるのねぇ・・・」

かごめの一言にりんはたちまち赤くなり、
そんなりんが、かごめはまたどうしようもなく可愛いと思う。

楓も同じ気持ちなのだろう、隻眼を細めてにこやかにりんを見る。

「そうじゃな、邪見も喜ぶじゃろうて。
 この前来たときも、着物なんぞより食べ物の方が
 いつも嬉しそうにしとると寂しそうにしておったからの」

りんは、違う意味で赤くなった。
そういえば、この紅珊瑚のかんざしは、
邪見がわざわざ京の都まで求めにいったのだと聞いた。
京の都がどこだかは分からないが、
「綺麗だけど、何に、どうやって使うの?」と聞くと、
邪見ががっくりと肩を落としたのを覚えている。

「・・・かごめさまのお陰です」

りんはもう一度鏡を見ながら、かんざしにそっと触れた。
今度、教えて貰おう。
一人でも、かんざしを使えるように。

「ありがとうございます」


りんはひだまりような笑顔で笑った。





続く


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


なかなか、前に進みません(苦笑
早く、次のお題に移りたいのですが。

今週は仕事が忙しくて、
おまけに風邪をもらってしまい、
ちょっと続きが遅くなりそう。。。。





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