あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

さいごの花火<4>

さいごの花火、やっと、完結。
ちょっと、長文です。







さいごの花火<4>






・・・かごめさまが、仰っていました。

・・・これは、儚さを愛でるものなんですって。





・・・儚いからこそ、美しいんですって。





・・・・殺生丸さまも、そう思う・・・?













・・・秋の夕暮れは早い。

かごめがりんの髪を結ってくれて半時も経たぬうちに、
空には茜色の夕焼けが広がった。


「今日はね、花火を見て貰って、それから隣村のおゆきさんのお産のお話をするんです。
 あの時、邪見さまが持ってきてくれた芍薬の根が無かったら、
 痙攣が収まらなかったかもしれないでしょう?
 あの薬草が役に立ったと教えてあげたら、邪見様が喜ぶと思うんです。
 あと、七宝ちゃんの昇級と、小さくなった着物を仕立て直したことと・・・・」


「今日はお義兄さんとどんなお話するの?」というかごめの問いに、
りんは目を輝かせて、実に嬉しそうに答えた。

「そっか、一月分のできごとを全部報告してるって感じね。
 それなら、お義兄さんも安心するかも~」

感心したように言うかごめに、りんは下を向いて、ふるふると首をふった。
「・・・りんは、いつも心配かけるだけで・・・。
 でも、少しでも楓様のお手伝いができてるって、お伝えしなきゃって思うんです。
 今、あたしがここにいられるのも、殺生丸さまのおかげだから」

謙虚なりんに、楓はにこやかに笑う。

「りん、おまえの薬湯のおかげで助かった村のものも、ずいぶんいるのだぞ。
 わしも、腰を痛めたときにはずいぶんと助けてもらったしな。
 殺生丸殿に感謝せねばならぬのは、もはやこちらかもしれぬ」

「楓さま・・・」

りんは、思わず潤んできた目頭を押さえながら、
えへへ、と笑う。

幸せだと、思う。
でも、この幸せも、やはり殺生丸さまがくれたものだと思う。

・・・りんを生き返らせてくれたのは、殺生丸さまなのだから。



「あ、きた」
「おぉ」
と、2人の巫女が同時に反応する。

感じるのは、二つの妖気。
それは、双頭龍と従僕の妖気。

「行っておいで、りん」

楓が微笑み、頷いたりんは文箱を大切そうに抱えると、土間に降りてかごめに向き直った。
ふんわりと結われた頭を、ぺこりと下げる。

「ありがとうございました、かごめさま」

かごめは袂から小さな陶器に入った獣脂ろうそくと火打ち石を出すと、
笑顔でりんに手渡した。

「線香花火に火を付けるときに使うといいわ。人頭杖じゃ危険だもの」
「わあ・・・ありがとうございます」

りんは嬉しそうに受け取って袂に入れると、
「行ってきます、楓さま、かごめさま」
と、満面の笑顔で言った。




カラリと木の扉を開けると同時に、小屋の前に阿吽がふわりと降り立つ。
外はもう夕焼けも終わりぎわで、薄闇が広がっている。

「邪見さま!阿吽!来てくれてありがとう~~!!」

りんは思わず駆け寄り、阿吽の双頭の間に顔をはさんで両方に頬ずりした。
阿吽は嬉しそうに喉を鳴らす。

「おお、元気だったか・・・って、おまえ、それ!」

邪見は阿吽の蔵の上から、驚きの声を挙げる。

りんは、邪見が今だかつて見たことがない髪型をしていた。
そしてそこには、邪見がいつぞや主から言いつけられて
京の都まで求めに行った紅珊瑚の簪が使われているではないか。
おまけに、りんが抱えているのは、一生使われることは無いと思っていた桐の文箱。
身につけているのは葡萄紋様を織り込んだ薄桃色の紬の着物に、唐草の蘇芳の帯。

全て、殺生丸が邪見を使って集めさせた、一級品である。
りんが気兼ねなく使えるように、あえてそのことは伝えていない。
しかし、華美すぎず上品な一品ばかりのそのすべてが
控えめなりんを可憐に引き立たせている。
特に、紅珊瑚の丸簪は驚くほど、りんの黒髪に映えていた。

「なんじゃ、おまえ、急に垢抜けおって、どうしたんじゃ!?
 そのかんざし、ちゃんと使えるようになったのか?」

簪を指さして驚いている邪見に、りんは
「かごめさまが、髪を結ってくれたの!髪飾りって、こうやって使うんだね!」
と、笑顔で言った。

りんは、ひょいと慣れた動作で阿吽に乗る。
「邪見さま、会いたかった~~!」
りんはいたずらっ子のような満面の笑顔で、邪見にぎゅうーーっと抱きついた。
りんも、もう幼子の背丈ではない。
こうやって、小さな邪見に思いっきり抱きつくと、自分が成長していることがはっきりと分かる。
それが嬉しくて、いつも会う度に抱きついてしまう。

「ぐぇーーーーっ!!やっやめんか!!」

「えへへー、ごめんなさーい」

りんは嬉しそうに笑う。
いつものことだが、全力で抱きつかれる邪見は窒息寸前である。
それも、また恒例のこと。

りんがためらいなく抱きついてくること。
最近ではそれが、邪見にとって「まだまだ子供じゃ」と思える、
ひとつの安心材料のような気がしていた。

人間は、あまりに早く変わっていってしまう。

・・・そんなに急いで変わらなくていい。

その思いは、きっと主と同じはずだった。



阿吽は、りんの暮らしている村を軽々と飛び越えてゆく。

「ところで、その文箱はどうした?何か入っとるのか?」

阿吽の手綱を持ったまま、邪見が振り返ってりんに尋ねる。
りんは嬉しそうに微笑んだ。

「うふふ、まだ、内緒」

村の最後の家の上空を飛び越え、森を越えて、阿吽は殺生丸の待つ草原へと降り立った。

先月と同じ、いつもの大きな切り株に殺生丸が腰掛けている。
仄かな月の光を受けて殺生丸は薄闇の中で白く輝いていた。
りんは、阿吽から降りると「殺生丸様!!」と声を上げ、思わず駆け寄った。

「来てくれてありがとう、殺生丸さま」

殺生丸はりんの姿を認めると目を細めた。

駆け寄ってきたりんは秋らしい装いに髪を結い上げ、
以前殺生丸が渡した髪飾りをつけている。
嬉しそうな上気したりんの表情。
鮮やかな朱色のかんざしは、月の光を受けて誇らしげに輝いている。


・・・りんから、りんの着物から、あの犬夜叉の伴侶の匂いがした。

(・・・かごめに、飾りたてられたか)


りんが殺生丸の腰掛けている切り株までくると、
殺生丸は立ち上がり、ふわりとその手をりんの頭に乗せて、いつもの問いをする。


「・・・息災か」


りんは殺生丸のいつもの問いをうけて、息をのんで目を閉じた。
りんはこの問いをされる度に、嬉しくて泣きそうになる。
いつも、離れていても。
殺生丸さまが、りんのことを思ってくれていることが、分かるから。



「・・・はい」



・・・一目見れば分かる。
殺生丸には、その姿を、その表情を見れば、りんが健やかなことなど一目瞭然に分かる。
だが、この問いをして「はい」と答えるりんの表情が、殺生丸は好きだった。
だから、わかっていても問うてしまう。

・・・会う度に。



「・・・似合っている」

殺生丸の一言に、りんは目を見開いた。
はじめてだった。
殺生丸から、そんなふうに言葉をかけて貰ったのは。

「・・・ほんとう?」

殺生丸は何もいわず、再び切り株に腰掛ける。

「よかった・・・。かごめさまに、つけていただいたんです。
 りん、せっかく頂いていたのに使い方がよく分からなくて、使っていなくて・・・」

りんは嬉しそうにふわりと笑った。

「・・・嬉しい」

殺生丸の前に、ぺたりとりんも腰を下ろす。
十五夜の満月の光で、あたりは明るかった。
殺生丸の顔が、りんからもよく見える。
一抹の感情も含まぬ端整な顔。・・・だけど、りんにとっては優しい優しいお顔。

阿吽が草原に体を休め、邪見も殺生丸のそばやってきた。

「殺生丸様、りんのやつ、何やら持ってきたようですが中身を言わぬのです」

殺生丸の目線が、りんの持っている文箱に落ちる。
殺生丸が贈った文箱。
作りがしっかりしているからか、中身の匂いがしない。
さすがの殺生丸も、中身までは分からない。

りんは、真剣な眼差しで殺生丸の顔を見る。

「あのね、殺生丸さま」

金色の眼差しが、りんの真剣な眼差しと絡み合う。

「りん、ずっと考えてた。
 いつも、殺生丸さまに心配かけてばかりだし、
 いつも、会いに来てくれる度に何かを貰ってばかりで・・・。
 ずっとね、考えてたの。
 りんが、殺生丸さまにできることってなんだろうって」

「おまえが殺生丸さまにできること?そんなもん、あるはずがなかろうが」

すかさず邪見があきれ顔でそう言ったが、頭上から凍り付くような視線を感じ、
邪見は咄嗟にいつもの嘘をつく。

「わ、わたくしは何もいっておりませんっっ」

光の早さで邪見は阿吽の後ろに隠れてしまった。
りんは苦笑する。

「うん、でもそうなの。なにも、思いつかなかった。
 りんが殺生丸さまにできることも、殺生丸さまが喜んでくれそうなものも、
 ・・・何も思いつかなかったの。」

りんは文箱に目線を落とす。
喜んでくれるか、分からない。
だけど。

「これ・・・りんが、作ったの。かごめさまに教えてもらいながら」

りんは勇気を出して、顔を上げる。
月光に照らされた殺生丸をみて、ああ、綺麗だなと思う。
本当に、違いすぎるのだ。
りんとも、人間とも。
この人が欲しいものなど、りんに分かるはずがない。

「喜んでもらえるかどうか、わからなかったけど、見てほしかったの」

殺生丸が、怪訝な顔をする。

「・・・見て欲しい?」

「うん。線香花火っていうの」

りんは文箱をおくと、袂から火打ち石と獣脂ろうそくを出した。
ろうそくを地面におくと、カチカチと火打ち石で火をつけ始めた。
火口についたかすかな火にろうそくの芯を近づけると、ポッと暖かな色合いの炎が生まれ、
あたりがほんのり明るくなる。

そんな火をつける手つきも手慣れたもので、殺生丸は人里に戻した年月を思った。
もう、りんは自分と旅をしていたころのりんではないのだと。
・・・そんな小さな事ですら、今は気が付いてしまう。

りんは桐の文箱をあけ、中から紙の包みをとりだした。
かさり、と乾いた音をたてながら、なかから5本の線香花火を取り出した。

「邪見さまー、邪見さまも一緒にやろう」

りんは笑顔で阿吽の後ろに隠れた邪見にも声をかける。
が、邪見は殺生丸のご機嫌を推し量ったように出てこない。
りんは、そんな邪見を見ながら苦笑する。

「はい、殺生丸さま」

りんは5本のうち、1本を殺生丸に手渡した。
殺生丸の長い指がりんから花火を受け取る。
りんはにっこり笑って、「見ててね」と言った。

りんの持つ一本が、獣脂ろうそくに近づけられる。

ちりり、と音を立てて小さな炎がついた。

橙色のその炎は、やがて小さな玉になり、
その小さな炎の玉から、金色の花のような火花が飛び散った。

ちりちりと、曼珠沙華のような繊細な火の花を散らす。





やがて、花は小さくなり、菊花のようなか細い線になり、
また小さな玉に戻ったと思った時、ぽたり、と地に落ちた。

ものの数秒の、ちいさな火花。

「ああ、終わっちゃった・・・」

りんは、ほぅ、と息を吐く。
殺生丸を見上げ、その表情をうかがう。

「・・・これを殺生丸さまに見て貰いたくて、今日は夜にきてもらったの」

殺生丸はりんに持たされた、細い花火を見る。
りんが作った花火とやらは・・・りんに似て、あまりに、それは。

「・・・美しいな」

おそらく、それがりんの求める言葉だろうと思った。
りんを見ると、りんは惚けたように、己を見つめていた。

「・・・ほんと?本当に、そう思ってくれた・・・?」

「・・・ああ」

りんの顔がくしゃくしゃになる。
嬉しくて、涙がにじんだ。

「・・・よかった!」

一気に、りんの肩の力が抜けた。
それほどまでに思い詰めていたりんの様子に内心あきれながら、
殺生丸は持っていた花火に火をつける。
僅かな逢瀬なのだからこそ・・・すべて、りんの望むように。

ちりちりと音を立てて、儚い火花が闇を照らす。

一瞬たりとも見逃さないよう、りんは殺生丸の持つ花火に集中する。
あっと言う間に、火花は小さな玉になり、落ちてしまう。

「終わっちゃった・・・」

りんは心から残念そうに言う。
殺生丸はりんの表情から目を離せない。
くるくると変わる、まるで光彩のようなりんがまぶしい。

「殺生丸さま、花火、どうだった?」

りんは大きな目で殺生丸の表情を見上げてくる。
あまりに真剣な眼差しで。
殺生丸にとっては、自分でやろうがりんがやろうが、同じなのだが。

「・・・儚いな」

二度も同じことを言うのもどうかと思い、思ったことを、そのまま口にだした。

りんは優しく微笑む。

「・・・かごめさまが、仰っていました。
 これは、儚さを愛でるものなんですって」

獣脂ろうそくの儚くも柔らかな光に照らされたりんの顔が、炎と共に揺らぐ。


「・・・儚いからこそ、美しいんですって」



殺生丸は目を細めてりんを見る。



「・・・・殺生丸さまも、そう思う・・・?」



りんが見る、殺生丸のその表情はどこかでみたもので。
・・・りんは思い出せなかった。
だが、どうしてか胸が痛い。
・・・どうしてだろう。

「・・・莫迦なことを」

殺生丸はふい、と顔を背けた。
少し眉を寄せたその表情がなんだか、悲しげに見えた。
りんは困ったように言った。

「りんは、儚いってどういうことかよくわからないの。
 犬夜叉さまは、「縁起でもない」って言ってたけど」

犬夜叉さまの名前を出したらご機嫌が悪くなるかな、と頭の片隅で思う。
そして、ふと気づく。
ああ、さっきのあの殺生丸様さまの表情は、犬夜叉さまに似ていたのだ、と。
少し、悲しげな、やるせない表情。

その時、りんの手首を殺生丸がつかみ、立ち上がらせた。

「殺生丸さま・・・?」

そのまま引き寄せられ、もう片方の手のひらが、そっとりんの頬に触れた。
優しく、優しく、親指がりんの唇に触れる。
・・・まるで、何かを確かめるように。

月の光に照らされた殺生丸の琥珀色の瞳が、りんのまなざしと絡み合う。

「・・・儚いとは、脆くて消えてなくなりやすい、ということだ」

まるで、おまえのようだ、とは言葉にしなかった。

よりによって、どうしてこのようなものを愛しく思うのだろう。
一時も、安らげぬ。

・・・ここ何年も、りんの匂いが感じられるところから、
私が動けずにいると知ったらおまえはどう思うだろうか・・・?

もう、二度と失いたくない。
ただ、それだけのために。

「殺生丸さま・・・」

りんは目を閉じて、頬に触れた手に、自分の手を重ねる。

「・・・りんは、大丈夫」

どうして、殺生丸の手のひらはこんなに優しいのだろう。
きっと、誰よりも強くて、誰よりも恐ろしいはずなのに。
だけど、りんには・・・。

「ありがとう、殺生丸さま」

りんは、目を開けて微笑んだ。

殺生丸の目に、りんの白く細いうなじが眩しい。
結い上げられた髪の中の、鮮やかな髪飾りが、りんの命のように思えた。
殺生丸の世界に、ただ一つ燦然と輝く、りんの命のように。

「あと、花火は3本あるの。皆でやりましょう、ね?」

にこやかなりんの笑顔。
殺生丸は、いつまでも触れていたいその手のひらをそっと離す。
・・・人里に残すと決めたときのように。

りんは、阿吽のそばへ行き、
おそるおそるこちらを見ていた邪見を笑いながら引っ張ってくる。

「ほらー、邪見さまもやろうよ、最後なんだからね」

りんは殺生丸と邪見にそれぞれ、一つづつ最後の花火を手渡した。

「これで、最後なの。
 この花火は、かごめさまの国にしかないんですって。
 本当は、この国にはないものなんですって。
 だから、これで、本当にさいごの花火なの」



りんはにこやかにさいごの花火に火を灯す。


「ほぉ・・・!」


邪見が食い入るように見つめるのを見て、りんは嬉しそうに笑った。







 終


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




言い訳なあとがき




・・・やっと、花火デートができました(笑
待たせてごめんね、殺生丸さま。

邪見さまのお邪魔付きだけど、許してね。

殺生丸さまは、きっと誰もが驚くほどの慎重さで、
りんちゃんの成長を見守っているんだと思います。

人里での暮らしの中で、りんちゃんはきっと、
大切な物をたくさん見つけていくと思うけど。
それに比べて、殺生丸さまには大切なものって、
りんちゃんしか無いんじゃないかと思う・・・。

それは、とても切ないことじゃないのかな・・・

だから、少しは、甘やかな逢瀬があればいい。

りんちゃんには、本当はまだ早いけど。
ま・・・まだ私の中では、小学校高学年だからね(;´▽`A``

御礼です
葉月さま☆ぺこさま☆
拍手、ありがとうございます。
ご期待に添えましたでしょうか・・・???
また、遊びに来て頂ければうれしいです!



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