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あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

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優しい光

「ご機嫌が直ったら渡しとくね~」

信じるりんちゃん。
殺生丸さまの思いは。


優しい光

拍手[81回]




天生牙は自ら折った。
冥道残月破は私から去った。
父上の意をくみ、納得した上でのことだ。
あれは、もう犬夜叉の技。

未練などない。

後ろで邪見がぐずぐずと泣いているが、咎める気がせぬ。
あれも思うところがあるのだろう。

りんが天生牙を抱えている。
よろよろと重さに耐えかねているところを、琥珀が阿吽に乗せた。

・・・分かっているのだ。
あれは、私のもとに還りたがっている。

あれは、私にしか扱えぬ。
鉄砕牙が人の守り刀であるように、
天生牙はこの世ならざるものを制する力を持っている。
あのような力を扱えるのは並はずれた力を持つ父上か私しかおらぬ。

だが・・・りん。
お前には分かっているのか。

この殺生丸が救いたいと思うものは・・・もう救えぬ。
もう、その刀でお前を救うことは出来ぬ。

持っていても、無意味だとは思わぬか。


かすかに、ため息をついた。

琥珀とりんの会話が耳に届く。
声を潜めるだけ無駄なことだ。

琥珀が技を失った私の心配をしているらしい。
己の身を案じる方が先だろう。
無駄なことを。

りんは私のことを案じてなどおらぬ。
あれは、私のことを信じている。
唯一、この殺生丸が守ると決めた愛しい命。

りんの声が、沁みいるように流れ込んでくる。

殺生丸のおっとうは、
殺生丸さまには形見の刀が無くても絶対に大丈夫だって分かってたから、
半妖の犬夜叉さまに強い刀を残したんじゃないのかな・・・
殺生丸さまもそれが分かってたから、
犬夜叉さまにあの技を譲ったんじゃないのかな・・・?

だから、大丈夫だよ
殺生丸さま、優しいもん


優しい、か。
私にそんなことをいえるのはお前だけだな、りん。

かつての父上に思いを馳せる。

妖怪らしくもなく、愛することの好きな人だった。
人を愛し、歌を詠み、人のように情に生きた。
弱い者をも慈しんだために、こぞって弱い妖怪どもは「お館様」と慕った。
そして、誰よりも強かった。

・・・守る者のために、散った。


りんの息づかいが変わる。
どうやら、阿吽の上で寝入ったらしい。

目が覚めたとき、己が天生牙を抱えたままで、あれはどんな顔をするだろう。
笑顔ではあるまいな。
私を見て、その顔は曇ることだろう。

振り返ってりんを見ると、
寝入って力の抜けたりんは今にも天生牙を落としそうになっている。

父上、あなたならどうされましたか。

想像して思わず苦笑する。
簡単に想像がついた。
あなたは迷いなく、笑顔であっけらかんと仰っただろう。

「か弱きおなごにそのようなもの、持たせておけぬな」

昔の自分はそのような父上が許せなかった。
だが、今は少し分かる気もした。
父上を慕っていた者は、恐怖心からではなかったのだ。
そのような父上だったからこそ・・・。


驚いた琥珀の前で、りんから天生牙をするりと抜いた。
何を思っているのか知らぬが、邪見がむせび泣いている。

父上・・・。

腰に差した天生牙から柔らかい光が漏れる。
殺生丸だけが感じることのできる、天生牙の波動。

優しい光はりんの笑顔に似ていた。





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