あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

無くした片方<4>

 

 


「・・・まあ、諦めたほうが身の為だぜ」


宗之丞は俺の言葉に、がっくりと肩を落とした。

 



無くした片方<4>

 



俺の名は、犬夜叉。
今は、かごめと共に、人里で暮らしてる。

奈落を滅して3年後、かごめは俺の元に帰ってきてくれた。
あの時の気持ちは、忘れられねえ。
あっちの世界で、安全に、幸せに暮らしてくれているなら、
それで満足しなくちゃいけねえ、そう必死で思い続けた3年間だった。

けど、どんなに離れていても、かごめを想う気持ちは薄れなかった。
それどころか、好きだという気持ちは、どんどん強くなっていく。
昼間は人里で力仕事を何やかんやと頼まれて、平常心で過ごせても、
夜になると、かごめのことを考えずにはいられなかった。

かごめが帰ってきてくれたあの日。
俺は、本当に本当に、幸せだったんだぜ。
誰かを好きになって、相手からも愛されるってのは、
なんか、胸の中があったかくなるんだな。
そんな気持ちを教えてくれたのは、かごめなんだ。
本当に、感謝してる。

半妖の身に生まれたことで、荒んでた時期もあったけどよ。
今になってみれば、おふくろの気持ちも分かるんだよな。
たとえ妖怪であっても、きっと、親父の事を本当に好きだったんだろうってな。


・・・だからよ。

まあ、何つーか、一応、宗之丞の気持ちも分からなくはないんだぜ。
誰かを好きになるのは、止められるもんじゃねえしよ。

けどなあ、りんの気持ちは、迷いなくあいつの方を向いてるんだよな・・・。
そりゃあ、俺から見たら、りんはあんな奴のどこがいいんだって思うけどよ。

・・・けど殺生丸の野郎、りんにだけには、優しいんだよな。

りんに、「お前、だまされてるぞ」って、何度言おうかと思ったけどよ。
あいつとりんの間に、一体何があったのか、いまだに俺はよく知らねえし、
りんが、「殺生丸さま、本当に優しいんだよ」とか、幸せそうな顔して言っての見てると、
少なくとも、りんにとってはあいつはそういう存在なんだろうと思ってよ。

けど、実際に、村に通ってくるあいつの姿を見ていると、
本当に、初めて会った頃とは、ずいぶん変わったって思うんだよな。

誰かを慈しむ、そんな感情があいつにあるとは思っていなかった。
けど、そういう気持ちのまったく無い奴に、天生牙が使いこなせるはずもねえし、
殺生丸のそういう部分を知っているのは、りんだけなのかもしれねえし。
そこらへんが、俺にはよく分からねえんだよなー。

何せ、殺生丸にとってりんが特別な存在であることは間違いねえし、
りんにとっても、それは同じだ。

それに・・・俺も、半分妖怪の血が混じってるから、なーんとなく分かるんだけどよ。

多分、妖怪は・・・気持ちが揺らぐことがねえんだよな。
永い時間を生きるからかもしれねえけどよ。
人間みたいに、器用に、気持ちを切り替えて生きることができねえ。

だから、殺生丸が大切に想う存在がりんなんだとしたら、
多分・・・この先もずっと変わらずに、そうなんだ。
そういう気持ちは、妖怪にとっては、死ぬまで変わることはねえと思うんだ。

だから、冷酷無比って言われた、あいつにそういう存在がいるんだとしたら、
何となく・・・あいつの味方をしなくちゃいけねえような、そんな気になっちまう。

殺生丸の野郎には、口が裂けても言えねえけどよ。
そんなこと言ったら、多分、俺がぶっ殺されるだけだからな・・・はは。


だから、あからさまに凹む宗之丞の顔を見ていると、少し気の毒な気もするけどよ。
けど、こういうことは下手に未練を残す方が、こいつの為にはならねえだろ。

・・・ま、多分、どう転んでも片想いなんだしよ。

「・・・・そうか・・・りんは、あの妖怪を・・・」

宗之丞は、肩を落として、呟いた。
俺は、びしょびしょになった火鼠の皮衣を絞りながら、言った。

「なんつーか、あいつらの関係は、俺たちもよく分からねえんだけどよ。
 多分、りんの気持ちは、そうなんだと思うぜ。
 りんは小さい頃に、あいつに拾われて育ったようなもんだからな。
 まあ、この先、どうなるかは分からねえけど・・・」

「若君、お考え直しくださいませ!
 妖怪付きの娘など、お館さまがお許しになるはずがありません!!」
「そうですぞ、若君!」

完全に凹んでしまった宗之丞に、二人の家来が唾を飛ばして言う。

まったく、目の前で妖怪はダメだの何だの言いやがって、
少しは半妖の俺にも気を使えってんだ。
まあ、仕方ねえよな。
妖怪ってのは、大概の奴が、人間にとっては悪さする奴だもんな。
七宝や雲母みたく、人間に寄り添って生きていける奴も中にはいるけど、
人間は餌くらいにしか思っていない奴もたくさんいるからな。
「妖怪は怖い」くらいに思っている方が、こいつらの為なんだろう。
まあ、目の前でそう言われると、俺はちょっと腹が立つけどよ。
ま、それも、もう慣れっこだからな。
別に構わねえよ。
今では、ちゃんとした理解者もいてくれるしな。

楓ばばあとかごめが小屋から出てきて、俺たちの姿を見てこっちに歩いてきた。

ってことは、りんの傍には、殺生丸が残ってんのか。
あいつが人間の小娘の看病してるなんて、昔じゃ考えられねえよ。

けど、殺生丸に、守りたいものも大切に思うのも、りんしかいねえんだとしたら、
すっとんでくる気持ちも、分からなくはねえな。
大切に思えば思うほど、失うのは恐ろしくなるもんだ。
毒蛇に咬まれたことを察したときは、さぞ腹立たしかっただろうぜ。
本当はこんな村の中に預けておくより、自分が傍で守ったほうが、よっぽど安全なんだ。
それなのに、敢えてりんの未来を考えて、わざわざ離れているんだもんな。

宗之丞はかごめの姿を見ると、慌てて立ち上がり、駆け寄って行った。

「み、巫女どの・・・! りんは、りんは大丈夫なのか?!」

「わ、若君・・・! いけません!!」
「そ、そうですぞ、若君!! 妖怪付きの娘など!!」

焦ったように宗之丞を止める家臣を見て、かごめは一つため息をついて、にっこりと笑った。

「心配しなくても大丈夫よ。
 さっき、殺生丸が持ってきた毒消しを飲んだの。 すぐに直に元に戻るらしいわ」

笑ってそう言うかごめを見て、俺はホッとすると同時に、心の中があったかくなる。

人間と妖怪との間には、どうしても越えられない溝があることは確かだ。
こいつらみたいな普通の人間には、妖怪と人間との心の繋がりなんか、
理解できなくても、仕方のないことなのかもしれねえ。
けど、そこで明るく笑っていられるかごめの姿を見ると、
俺は本当に、何というか・・・救われたような気持ちになるんだよな。


「心配を掛けたの、宗之丞殿」

楓ばばあはそう言うと、軽く頭を下げたまま、言った。

「・・・りんは、まだまだ子供でしての。
 申し訳ないが、縁談の話は、伺うことはできませぬ」

「・・・・楓どの・・・」

がっくりと肩を落とした宗之丞君に、俺は肩をたたく。

「・・・ま、そういうことだ。
 とりあえず、あいつが小屋から出てくる前に帰った方が身のためだぞ」

その言葉を聞いて、家臣二人は慌てたように、宗之丞を引っ張って帰っていった。

「わ、若君の身に何かあれば、私共が責任を問われますっ!!」
「そうじゃ、若君の御身が第一!!」

そんな慌てて去っていく家臣の様子を見て、かごめが眉を寄せて俺に聞いた。

「何? あの人たち、殺生丸と何かあったの?」

俺はそんな三人を見ながら、頬をさする。
口元が少し切れていて、口の中にはじんわりと血が味が残っている。

「やだ、犬夜叉。それもしかして、殺生丸に殴られたの?」

かごめは俺の傷に気付いて、眉間にしわを寄せた。

「ああ。宗之丞の代わりに殴られた」

「えぇっ?! 何それ!?」

かごめの呆れたような顔を見ながら、俺はがりがりと頭をかいた。
何から話せば、かごめに分かってもらえるかどうか分からねえ。
一発殴らねえと気がすまねえっつーか、こういうのって、女には、分かんねえのかな。

「・・・仕方ねえだろ。
 普通の人間があいつに殴られたら、死んじまうぜ。
 殺生丸の奴、りんが蛇に咬まれたことにも怒ってたのかもしれねえけど・・・
 あいつの鼻なら、ここ何日間か、宗之丞がりんにべったりくっついていたことも、
 匂いで分かってたはずだし、それにもかなりイライラしてたはずだぜ。
 りんが蛇に咬まれた時のことも、多分あいつの鼻なら、何があったか分かってるはずだ。
 ・・・宗之丞の奴、りんが蛇に咬まれた時、傷から毒を吸い出したって言ってたろ?」

「それが、何?」

「・・・それが何って・・お前、なあ」

俺は、ますますがりがりと頭をかいた。
何で、分からねえんだよ。
りんだって、あいつが出会ったころの小っちゃいガキとは違うんだ。
最近は手足もすんなり伸びて、女っぽくなってきたし、
もう子供とはいえない年頃になってきてるんだぜ。
・・・自分の大事な女の肌に、自分以外の野郎が吸いつくなんて、許せるかよ。
たとえ、毒を吸い出すためでも、だよ。

俺だって、かごめが同じように、他の野郎から吸いつかれたりしてるなんて、
想像するだけで虫唾が走るっての。
そんなの、ぜってーに、許せねえ。
あいつの性格を考えれば、俺以上にそう思うことなんて、簡単に分かりそうなもんだけどな。

「・・・やあね、相変わらず乱暴なんだから」

ため息をついたかごめを見て、
やっぱり、こういうのは女には分からねえのかな、と、俺は思う。

さっき殺生丸は、ものすごい勢いで空からやってきたが、俺のことなんて見ちゃいなかった。
とんでもない殺気を振りまきながら、睨み据えていたのは宗之丞だ。

あいつが不愉快そうに口を開いたのは、たった一言。

「・・・貴様か、りんに纏わりついていた虫は」

それだけだ。
俺が焦って、宗之丞とあいつの間に割り込むと、
あいつは、初めて俺に気がついたような顔をした。

・・・で、俺が口を開く前に、思いっきり殴りやがった。

まったく、八つ当たりもいいところだぜ。
川の中まで吹っ飛んだじゃねえかよ。
けど、多分それで気が済んだのかもしれねえな。

ビリビリと、触れるだけで殺されそうな妖気を纏ったまま、
あいつはりんの眠る小屋の中へと入っていったんだ。

川の中で、慌てて立ち上がった俺が見たのは、腰を抜かして震える宗之丞と家臣だった。

そこに、阿吽に乗った邪見が桃を抱えてやってきて、
殺生丸の後を追って行ったわけだ。

「・・・りんは、大丈夫なのか」

俺がそう聞くと、かごめは小屋を振り返りながら言った。

「大丈夫みたい。殺生丸が、直に元に戻るって、そう言ってたわ。
 けど・・・なんていうか・・・久々にドキドキしちゃったわー・・・」

かごめは顔を赤らめて、胸の前で手を組んで、なんか妙にうっとりしてやがる。
何を言ってんだ、こんな時に。

「どうしたんだよ」

俺は小屋を見て、眉を寄せた。

「・・・すっごく、鮮やかだったわよねえ、楓おばあちゃん」

「・・・ま、まあな」

楓ばばあが、妙に赤くなって、ゲフンゲフンと咳払いをした。

「なんか、ドラマ見てるみたいだったわー」

どらま?!
何だ、それ。


怪訝そうな顔をした俺に、かごめは、ふふふ、と笑った。

「・・・りんちゃんの意識が無かったのが残念だわ」

「・・・?!」

何のことか、ちゃんと分かりやすく言えよ。
何なんだよ。


・・・まあ、りんが助かったんだったら、何でもいいけどよ。

 

 

 

 

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拍手[63回]

comment

素敵です。

  • みどみどみど 
  • 2010/09/12(日) 11:28
  • edit

うるうる・・・してしまったです。
今回は犬夜叉さま視点ですね。原作にマッチしてて思わず涙です。犬夜叉さまの語り・・「妖怪は気持ちが揺らぐことがねえんだよ」殺生丸さまは、ずっとりんを大切に思っていくんですね。どんなことがあっても!!!
すごいすごいです。そんな風に思われたいわ。私も。

もうもう感動のほかになにもありません。
愛美さんの殺生丸さまを拝見していて・・そうそう殺生丸さまはそんな人だわと思いながらよんでしまいました。

桃は口移しでりんに・・・
それは、く・ち・づ・け・ですね。きゃ~きゃ~ぎゃ~!!!そういうことですね。納得です。


殺生丸さまについてホントもっともっと語れたら・・どんなに幸せか・・・
愛美さんまたレスしてよろしいでしょうか??
ってしてますけど・・ははは

主婦友の中にはアニメについて熱く語り合う友はいるのですけどね。犬夜叉は・・いないです。悲しい。
殺生丸さまは、千秋さま(のだめ)に押されて負けてます。
殺生丸さまほど一途にりんちゃんを思う人はいないのに~~ぐやしい。

愛美さんのお話を読ませていただきながらこれからも殺生丸さま&りんちゃんに一途に私も娘もがんばりまあ~す!!
(意味不明のおたよりでごめんなさい。)

いらっさいませ!!

  • 愛美 
  • 2010/09/12(日) 18:13
  • edit

こんばんは!!いらっさいませ!!!
ようこそです~~(*^_^*)

うるうるしていただけましたか?!
良かったです(^◇^)
犬夜叉語りでも、いけるもんですね・・・。
今回は、男心の解説を、犬夜叉くんに頼みました。

「自分の大事な女の肌に、自分以外の野郎が吸いつくなんて許せるかよ」

という一言を言ってもらいたかっただけなんですけど、ずいぶん長くなってしまいましたねえ・・・(笑
あと、人工呼吸状態の二人を、目の前で見ていたかごめと楓が、小屋から出てきてからの会話を妄想してまして。

「な、なんかどきどきしちゃった」
「・・・そ、そうじゃな」
「なんか・・・殺生丸、格好良かった・・・よね」
「あ・・・鮮やかじゃったな」

とまあ、喋りながら犬夜叉のところまで来た、という。
その一場面を書きたかったんです。うふふ。

そうですね、妖は多分、簡単には、気持ちが切り替わらないんだと、私は思います。人間が気持ちの切り替えが速かったり、心変わりを簡単にするのは、生きる時間が短いからじゃないのかな、と。

妖怪の生きる時間は、人間の何十倍。
その長い一生を生きる殺生丸。
りんは、永遠の愛しい命なんでしょう。きっと。

完結編のアニメも終了して、世の中はどんどん移り変わっていくのに、私の心は殺生丸さまから、なぜか一向に変わらず(^◇^;)
いつまでもしがみついているようで、なんか自分が痛い奴に思えてくる時もあるんですがねえ。
(いや、頭の中はすでに十分痛い奴です。ごめんなさい)

だって、これ以上に妄想が膨らむカップル知らないんだもん(;一_一)

もうしばらくは、このサイトで遊びたい・・・。

わたしこそ、意味不明のレスでごめんなさい・・・。

また、遊びにきてくださいね!

私も同じです

  • みどみどみど 
  • 2010/09/12(日) 19:02
  • edit

犬夜叉!!ばんざい!殺生丸さまバンザイ!

私も同じく頭が痛いヤツです。
ずっとずっと犬夜叉のファンだったので(殺生丸様の)完結編が終わってもずーっと二人の未来を妄想し続けていました。しかしわたしにゃあ芸がない!!文才も絵を描くちからも・・ない。

だから
これからも
愛美さんちの
殺生丸様とりんちゃんのベストカップルの今後を私は温かく見守らせてください。おねがいしまーす。

こちらこそです!

  • 愛美 
  • 2010/09/12(日) 19:57
  • edit

ありがとうございます(*^_^*)

私も、お話を書いたのは、実はこのサイトが初めてなんですよねえ・・・。
これはもう、情熱としかいいようがない。
「もっと殺生丸さまを!!」という、邪見バリの殺生丸さまFAN根性とでもいうべきでしょうかね(笑
初期のころの作品は、拙くて拙くて、とてももう、恥ずかしくて読めませんわ・・・ははは(^◇^;)

とりあえず、書いてみたら意外といけた、という感覚なので、絵を描くというのは私も現在七転八倒してますので大変かと思いますが、文章を書くというのは、比較的手をつけやすいのかなあと思うのですがねえ・・・。
ああ、殺りんサイトさま、増えないかなあ・・・(笑

こちらこそ、拙い作品と痛い妄想ばかりで恐縮ですが、今後とも、ぜひぜひ、遊びにきてくださいませ!!!
お待ちしてますw

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