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あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

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睦言・・・・ムツゴト・・・・

・・・・・甘やかな寝息が、規則正しく、健やかに繰り返される。


眠りにおちたりんの唇に、私はそっと口づけた・・・・。

 

 

 

 

 

 


  睦言・・・・ムツゴト・・・・


拍手[61回]

 

 

 

 


・・・・ りんの規則正しい寝息が,、私の口づけで乱れることはなかった。

よほど、深く眠っているのだろう。

まだ、眠りについて一刻ほどだ。
いつもなら、こうした私の悪戯に、りんは目をさまし、「・・・もう・・・殺生丸さま・・・」 と、
寝ぼけながら甘い声で文句を言う。

・・・今日はよほど、眠かったのだろう。 
日中、あんなに動き回るからだ。 ・・・幼子でもあるまいに。

思い返して、私は小さなため息をつく。

 


――――― 加減してやるのだぞ、殺生丸
―――――――― 人間の体は、脆いのだからの

 


以前、この里に降り立った母が、去り際に言い残した言葉だ。
・・・思い返すも忌々しいが、言いたいことが分からぬわけではない。

あの母は、それなりにりんのことが気に入っているらしい。
その言葉には、真実、りんを案ずる心情がこもっていた。


そなたのような大妖怪の夜伽をまともに務めていては、人の身は長くはもたぬぞ ―――― ・・・
あの母は、そう言いたかったに違いない。

 

「・・・・・・・りん・・・」


殺生丸は、起こさぬようにそっと名を呼ぶ。

・・・薄布を通して差し込む月の光。

大妖は、りんの頬にそっと口づけた。


部屋の隅に、控えめに生けられた橘の花が静かな夜風に吹かれて、
その香りを部屋にくゆらせている。



・・・数刻前のことだ。

私の着替えを手伝いながら、りんは眼を何度もしばたかせていた。
着物を畳みながら、うとうととまぶたが落ちそうになっている。
・・・・よほど疲れているに違いない。

・・・・・・・まったく、苦笑してしまう。

私は、今宵の閨事を、仕方なく諦めることにした。
 

「・・・・・りん」


私が呼ぶと、りんは私の羽織を畳みながら、とろんとした目でこちらを見た。
私は、苦笑いを浮かべて、りんのそばへ寄り、座っているりんを両手で抱えあげる。

 

「・・・・・・無理をするな。 今宵はもう、休め」

 

「・・・・ ごめんなさい・・・今日、なんだか・・・すごく眠くてね・・・・」

 

抱えられたまま、りんは眠そうに目を両手でこする。
・・・・まるで、幼子だ。

華奢なりんを抱きかかえたまま、私は閨を覆う薄布を上げて、柔らかな夜具の中に滑り込む。
横になった途端、私に抱かれたまま、りんはあっけなく眠りに落ちてしまった。
まるで、子供の様な寝顔だ。

( ・・・・閨事に至らねば、幼い頃と、まるで変わらぬな・・・ )

私はあきれて、小さくため息をついた。

 

 

――――― 加減してやるのだぞ、殺生丸
――――――― 人間の体は、脆いのだからの

 


・・・・・ 言われなくとも、そのくらい分かっている。

私とて、まぶたも開かぬほど疲れているりんに、夜伽を強いる気にはならぬ。

・・・たまには、ただ腕の中に抱いたままで過ごす夜も、悪くない。

健やかな寝顔の前にかかっている一筋の髪をすくい上げ、小さな耳にかけてやり、
私は内側で燻ぶる感情を抑えるように、長い息を吐いた。

・・・・りんを抱きたくないといえば、嘘になる。
だが・・・こういう夜が、たまには悪くないと思うのも、また事実だ。


・・・・りんと共に閨に入ろうと、別に私は睡眠をとるわけではないのだ。

りんの眠りにつられて、うとうとと眠りに落ちることもあるが、稀なものだ。
私とは比べものにならぬほど、りんはよく眠る。
毎晩、これほどに休息を得なければならぬのならば、日中、あれほど動かねばよいのに、と私は思う。

今日も、「 裏庭に木苺がたくさん実をつけたの 」と嬉しそうに言いながら、一日掛けて、
邪見や里の子供たちと、あの甘酸っぱい匂いのする木の実と格闘していた。
酒に漬けてみたり、蜜で煮詰めてみたり、端で見ていても、私には何をしているのか
さっぱり分からなかったが、りんは、実に楽しそうに作業をこなしていた。
・・・・甘い匂いを、全身に纏わせて。

「 昔、かごめさまに教えてもらったの。 これはね、じゃむって言うんだよ、殺生丸さま。
  木苺の実をよく洗ってね、甘く煮詰めるの。
  とっても甘くて、美味しいんだよ~。 りん、木苺のじゃむ、大好きなの。
    邪見さまも、人間の食べ物だけどこれは大好きなんだって。
    殺生丸さまのお口にも合うといいなぁ。 とっても、良い匂いでしょう? 」

屋敷の中から眺めていた私のそばにきて、嬉しそうにそんなことを言う。

竈にかけられた真っ赤な鍋が、くつくつと煮立ちながら、そこらじゅうに甘酸っぱい匂いを
振りまいている。
人間の食べ物は、基本的に口に合わぬし、邪見の好物など、どうでもいい。
・・・というより、己の知らぬところで、ちゃっかりりんと好物を共有していた邪見に、腹が立つ。


「・・・・りん」

「・・・?」

私は、寄ってきたりんの耳のそばで、りんにだけに聞こえるように言う。

「 ・・・・・お前のほうが、芳(かぐわ)しい。 ・・・・今すぐ食べてやる 」

私が笑うと、りんは木イチゴのように真っ赤になって、逃げていった。
・・・ 明るいうちから閨に連れ込まれるのは、好きではないらしい。 

 
 

規則正しい、呼吸。

・・・・ヒトは、眠る。 日が落ちると、じきに。

・・・・・・私にできるのは、そんなお前に、寄り添うことだけだ。

 


・・・・・お前のすべてが、愛おしい。

ほの白い月の光に照らされて、つややかなりんの頬が光っている。
桃の果実のように、すべらかで柔らかな、愛しいむすめの頬。


 ・・・眠らねば生きられぬのなら、眠ればいい。

私は月の光の下で、おまえを見ていよう。

その眠りが妨げられることがないように。




・・・・・・・・・・・愛している・・・りん。

 

眠りについたりんの唇に、私はもう一度、そっと口づける。
・・・・起こさぬように、そっと。

・・・・・明るい、月明かりの下で。

 

 

 ――――――  どれだけ、そうしていただろう。



眠っているりんが、ふいに身じろぎをした。

 

「・・・・・・う・・・・」



私は、りんの顔を覗き込む。



「 ・・・・だ・・・じょ・・・ぶ、だも・・・ん・・・・」

「・・ほお・・・て、おい・・・て」



私はりんの寝言に、耳を傾ける。
・・・・・・夢を、みているのか・・・・?




「 ・・・・せ・・まる、・・さ、まが・・・」


・・・・名を、呼ばれた気がした。

 

「・・・・・・いや・・・・い、きたく・・・ない」

 

ふいに苦しそうに、りんが全身を強ばらせる。
目尻に、小さな涙の粒が浮かぶ。



・・・・・悪い夢を、みているのか・・・・

 

私は、そっと、手のひらでりんの頬に触れる。

 


「・・・・・・・・りん 」

 

 

・・・・・・・・私は、ここにいる。

 









その一言が、私の救いでした へ 



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