あやかしとむすめ

殺りん話を、とりとめもなく・・・  こちらは『犬夜叉』に登場する 殺生丸とりんを扱う非公式FANサイトです。

摘まれた花


妖である殺生丸さまの感覚は、とても、研ぎ澄まされているのだと思います。
人間には聞こえない音も、匂いも、感じているのではないでしょうか。

・・・こぼれおちる涙の音が、ひとつひとつ、聞こえてしまうほどに。



そんな殺生丸さまとりんちゃんの、初めての―――・・・。



りんちゃんは、14歳くらいでしょうか。




おすすめBGM・・・ブレスオブファイア2の「おもひで」
             ぜひともリピートで流していただければ。






摘まれた花





「良いか、りん、よく聞けよ!」
「うん、なぁに?邪見さま」

「これはの、殺生丸さまが妖の匠に命じて作らせた、貴重な品なんじゃぞ!」
「うわ~~~~キレイ!!」
「そうじゃろ~~!!大切にするんじゃぞ!!」
「・・・でも、これ、なぁに?」

「・・・・・・・がっくし」

「・・・ごめんなさい」

「・・・まだお前には早かったかのぅ・・・」
「・・・?」


「これはの、鏡じゃ」
「かがみ?」

「ほれ、正面にまわって見てみろ」
「・・・うわぁ、これ、りん? ねえ、りんが映ってるの?!」

「そうじゃ!すごいじゃろ!!」
「本当だ~~~~!!」

「まあ、殺生丸さまに会う前は、ちゃんと身なりを整えてだな・・・」
「えー、りん、ちゃんとしてるよー」
「あほっ!今日も、頭にクモの巣引っかけておったろうがっ」
「あ、あれはー、近道してきたからだもんー」

「まったくお前は・・・」
「ごめんなさいー。じゃあ、これからはちゃんとこの鏡使うから」
「当たり前じゃっ!」
「えへへ・・・」

「・・・ありがとう、殺生丸さま!りん、大事にするね!!」

「・・・・・そうか」

殺生丸さまは、かすかに目元をゆるめて、りんの頭を撫でてくれた―――・・・。

 


この里に預けられて間もない頃、りんは殺生丸から小さな手鏡を貰った。
いつもは楓の小屋の片隅においてあるその手鏡は、
殺生丸の訪れる満月の日だけ、りんの胸元に入る。

(・・・りん、変じゃないかな)

小さな手鏡は何年使われても曇ることもなく、傷も付かず、
その艶々とした表面に、りんを映す。
鏡に映るのは、もう、幼い子供ではない。

りんは草原にある石に腰かけて、月に一度の殺生丸の訪れを待っていた。
高台にある草原は、さわやかな風が吹き抜けてとても気持ちがいい。

(まだかなー、殺生丸さま・・・)

鏡を持ったまま、りんが背伸びをしたときだった。

ぽろり、と―――。

鏡がその手をすり抜けて、カシャーン、と高い音をたてた―――・・・。

 

 

「―――――――――・・・っ!!」

 

 

 

 

 

 

 


殺生丸は頬杖をついて、泣きじゃくる目の前の少女をみつめた。

昔、手渡した鏡など、いくらでも作らせればすむことだ。
泣くほどのことでは、ない。


だが、互いに石に腰かけて、こんなに近くでまじまじとりんの顔をみたのは久しぶりで、
ただただ、殺生丸は・・・りんを見ていた。

瞳にかかる前髪が邪魔だったので、指を動かしてどけてみる。

洪水のようになった、りんの瞳。
大きな、大きな、瞳。

本当に、こんなに近くでみるのは久しぶりだ。
いつも笑っているこの娘の、涙の匂いを味わうのも久しぶりだ。

・・・りんの涙。
・・・美しい、光の珠。

こんなに美しいものを、久しぶりに見た、と殺生丸は思う。

 

その滑らかな頬を、いくつもの、宝石のような光の珠が落ちていく。

・・・まるで、あえかな光を放つ、りんの命のように。

 


その大きな瞳から、りんはぽろぽろと涙をこぼした。
りんの柔らかい小さな手と指が、その涙をぬぐう。

「・・・ごめんなさい、殺生丸さま、ごめんなさい・・・!」

その雫がぬぐわれてしまったことに、殺生丸は眉を寄せる。

「・・・」

決して怒ったからではないのだが、
りんは、殺生丸の表情を見て、更に泣き出してしまった。

「う・・・うっ・・・う・・・」


ぽとぽと

ぽとぽと、ぽとと


頬から滑り落ちたその光のしずくは、跳ねるような音を立てて、宙にとぶ。

「・・・えっ・・・うう・・・ぐすっ・・・」

「・・・・・・・」

「・・・ごめんなさい・・・うっ・・・うう・・・」

りんがあまりに乱暴に、手の甲でその涙をぬぐおうとしたとき、
殺生丸はりんの手首を掴んで、やめさせた。

・・・そんなことをしたら、光の珠が、命を失ってしまう。

もう少しだけ、この甘い光の雫を見ていたい。


ぽろ、ぽろ、ぽろり

ぽろり、ぽたん、ぽとん・・・


甘い、甘い、匂い。

りんの、匂い。

涙の・・・匂い。


手首を掴まれたりんは、殺生丸を、見上げる。

その途端に、また、ぽろりと涙がこぼれた。


「・・・怒ってなど、おらぬ」

殺生丸がそう言うと、りんはまた涙を盛り上がらせた。

「だって・・・あれは、・・・」

ぽろり、ぽろり

ぽろ、ぽろ、ぽろり


甘い、甘い、りんの涙。

りんの匂いのする、涙。


両の手首を、殺生丸に抑えられては、りんはただ泣くことしかできない。
涙をぬぐうことも、できない。

「大切な、殺生丸さまからいただいた、鏡だったのに・・・」

「・・・構わぬ」

「・・・う・・・うっ・・・」


・・・まるで、光の洪水のようだ。

りんの瞳からこぼれ落ちる、光の珠。

甘い、甘い、光の珠。


どれだけ見ても、どれだけ見ていても。

こんなに見飽きぬものが、この世界にあったのか・・・。


触ることすら、躊躇うほどの・・・


「・・・りん」

「・・・ごめんなさい・・・」

「構わぬと言っている」

「だって、殺生丸さまの・・・うっ、う・・・」


ぽとん・・・ぽたん、ぽとん・・・


「大切にしてたのに・・・うっ・・・うう・・・」

「・・・構わぬ。 また、作らせればすむことだ」

「そんな・・・!」

ぽた、ぽた、ぽた、ぽた・・・

「りんは、やだよ・・・!」

「・・・構わぬ」

殺生丸は、その香りを味わうように、目を閉じた。

 

その、雫の放つ匂いが、・・・わたしを誘う。
・・・・その光の雫は・・・どんな味がするのだろうか・・・?

もう一度、この目を開けて、りんを・・・あの光の雫を見てしまえば・・・・

きっと・・・もう、抑えられぬ。

 

ぽたん、ぽたん・・・
ぽと、ぽと、ぽとん・・・


「殺生丸さま・・・」


もう、抑えられぬ・・・。


「・・・・りん」


りんの両の手をふさいだまま、私は伏せた目をゆっくりと開けた。

 

 

 

 

 


殺生丸の掌は、優しく、りんの両の頬を包む。

・・・柔らかい唇が、頬を滑り落ちるりんの涙を、吸った。

「せ・・・しょうまる、さま・・・?」

りんのまぶたに、優しく唇が触れる。

「・・・あ・・・」

何度も、何度も、まぶたの上に優しい唇がおちてきて、

いくつも、いくつも、こぼれ落ちるりんの涙は、ぜんぶぜんぶ、その唇が吸った。

「・・・・・りん・・・」

金色の目が、大きく見開かれたりんの目をうつした。

「・・・せっしょうま・・・」

 

りんの唇は、ついばまれるように、涙を言葉を、その唇に・・・すいこまれていった。

 

 

 

 

 

 

その日、私は、小さな花を摘んだ。

・・・大切に、大切に、育ててきた小さな花を。

 

 

 

 

 

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